女性が意に反したAV出演を強要される「AV出演強要問題」。被害者支援団体に寄せられる相談は年々増えている。AV業界では女優らによる新団体が対策を模索。しかし、具体的な対策は進んでおらず、男優の辻丸氏は業界の内部批判を続けている。公明党がプロジェクトチームを立ち上げ、国会でも取り上げられているAV出演強要問題の当事者たちに聞いた。

 業界歴30年。AV男優の辻丸氏はブログ(http://kohe000.at.webry.info/)や集会で、内部批判を続けている。なぜか。「昨年5月、HRN(人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」)の報告書に対して業界側が開いた公開検証集会で、私だけが30年間見聞きしてきた強要の例を話した。そしたら、業界側からスルー(無視)された。人気女優たちが『強要なんてない』と反論していた時期でしたが、被害を訴える女性がいるのに、業界の反応があまりにも、にぶかった。それからです」。

 辻丸氏は「AV撮影と知らずに現場にきて、本番を強要された女性2人の話を聞いています」と話す。「その時のビデオも見ましたが、2人ともニコニコしている。女性の気持ちとビデオの中での表情は、必ずしも正比例しないんです。ハードな拷問の裏にワンプレーごとの意思確認があることもあれば、ラブラブな絡みの裏に強要があることもある」。

 80年代にAV雑誌の編集者から演じる側に入った。役どころは「いじめ男優」。言葉責め、縛り…。「嫌われ役ですから、最初に訴えられても仕方ない」。だからこそ、女優の気持ちを大切にしてきた。小中学校でいじめられ続けた経験も、被害者の気持ちを大切にする理由の1つだ。「ちょっとかっこつけて偽善的に言うなら、贖罪(しょくざい)や懺悔(ざんげ)もあります。今の業界は『いじめはない』という学校と同じ。被害者と向き合うことなしに、業界の健全化などあり得ない」。

 自ら出演している女優たちも大勢見てきた。本音を言えば、30年も働いてきたAV業界は「映画やテレビでは絶対描けないことを描ける世界」だという自負もある。法規制の動きには「きな臭さ」も感じている。業界が主体となった自主改善を願い、発言を続けていくつもりだ。