周年行事で、町おこしで「ギネス世界記録」に挑戦だ! 英ギネスワールドレコーズの日本オフィス、「ギネスワールドレコーズジャパン」が今月初旬、企業や団体を対象にセミナーを開催。企業の人事担当者ら16人が参加した。今夏の日本テレビ系「24時間テレビ」でも取り上げられるなど、ここにきて再注目されているギネス記録。一体感や絆を深めるべく、会社単位や仲間同士でチャレンジする動きが広がっている。
参加者の目は、真剣そのものだった。それぞれが細かくメモを取りながら、世界一への挑戦をイメージしているようだ。約1時間のセミナーが終わると、担当者と熱心に話し込む姿もみられた。
ギネスワールドレコーズジャパン広報の上岡風美さんは「挑戦を通じて生まれる一体感や、団体のPRにも使えるストーリーなどを紹介し、親しみを感じてもらいたい」とセミナー開催の理由を説明する。近年、周年記念イベントなどで社員一丸となってギネス世界記録に挑戦する企業が増加。一方で、申請方法や活用の仕方をうまくイメージできないとの声も上がっていたという。
ギネス世界記録は現在、5万以上が認定されているが、「何でもあり」というわけではない。同社によると「計測できる。証明できる。標準化できる。記録更新できる」という4つの指標に基づき厳正に審査される。もちろん世界一へのハードルは高いが、垣根は低く「誰でもチャレンジできる」のも特徴だ。
2019年に100周年を迎える企業の人事担当の男性は、記念行事の中での挑戦を考えての出席。「2年前に社員の家族も含めた社内イベントが行われたが、ここ数年はそのくらい。話を聞いて、みんなで一体感を持って何か1つのことをやることに、企業として価値があると感じた」と前向きな様子だった。“種目”については検討中という。
参加者の中には、個人でのギネス世界記録保持者の姿も。今後、団体での記録挑戦のために受講したという。
12年に米コンサルティング会社が行った調査によると、日本企業の「従業員エンゲージメント指数」は先進国28カ国中最下位だった。同指数は、組織に貢献しようとする意欲や、努力しようとする意思の大きさを示す。つまり日本人は、自分たちが考えているよりも、会社への愛着度や社員同士のつながりが低いという分析だ。近年増えている企業を挙げての記録挑戦の動きは、そんな風向きを変える可能性がある。
世界記録挑戦には、不思議な力もある。11年の東日本大震災発生直後、イベントなどは軒並み自粛ムードとなった。だがその年も、日本での申請件数は落ちなかったという。上岡さんは「みんなで団結して、何かをしたい。ポジティブな挑戦をしたい。その1つの方法として、記録に挑戦してくれたのだと思います」と分析する。一緒に世界一を目指す。その行動自体が記録以上にもっと、大切な何かを生み出している。【太田皐介】
◆ギネス世界記録(R) 英ギネスワールドレコーズが収集、認定している人間や動物、乗り物、地球、宇宙の記録などのさまざまな「世界一」。現在5万を超える記録があり、16年の年間申請数は世界で約4万7000件。記録の挑戦に立ち会う「公式認定員」は世界中に100人弱で、19カ国語に対応している。書籍「ギネス世界記録」は1955年に英国で初版が発売。現在までに20カ国語に翻訳され、100カ国以上で販売されている。