2020年東京五輪・パラリンピックの輸送拠点を移転後の築地市場跡地に建設する計画について、水産仲卸業界の有志で構成される「築地女将さん会」が28日、大会組織委員会を訪れ、計画の変更を要望した。要望書では、豊洲市場の土壌汚染や地下水位問題が解決しておらず、同市場の開場日が未確定の中で、五輪日程が移転理由となるのは違うとの主張を展開した。

 築地から豊洲への移転時期については今月6日、東京都側と築地市場の業界団体側で「来年10月中旬」と取り決め、同10日の新市場協議会で具体的な日取りを決定する流れだった。しかし、江東区の山崎孝明区長が、豊洲市場の観光拠点「千客万来施設」について「整備が確定しない限り、市場の受け入れを再考せざるを得ない」とコメント。これを市場業界側が問題視し、協議会が中止となり、現在も移転時期が確定していない状況だった。

 「築地女将さん会」は仲卸業者からなる「東卸組合」の加盟社から請願署名を集め、この日までに532社中、273社から、移転時期に関する全組合投票を実施すべきとの回答を得たとした。同署名を明日29日にも「東卸」執行部へ提出する。同会は「来年10月中旬」とした移転時期について、「仲卸の総意ではない。しっかりと全業者の投票をすべきだ」と訴えていた。

 一方、要望を受けた組織委側は「我々はあくまでも、都が市場を移転した後の跡地を使わせていただく立場。豊洲への移転がどのように進むかを注視していく」とコメントした。

 築地の輸送拠点は、晴海の選手村に近く、主会場の新国立競技場を結ぶ環状2号線の間にあり、利便性に優れている。また、まとまった広さがあり、大会期間中に使用する半数となる約3000台の車両の拠点とする予定。

 しかし、都が示している日程案によると、来年10月の市場移転直後から地上部解体工事を始め、16カ月を要するとしている。並行して市場跡地の土壌汚染調査、埋蔵文化財調査を行った上で、駐車場整備には約13カ月かかるとなっている。

 豊洲市場の土壌汚染追加対策工事の入札も不調続き。解体工事と駐車場整備は並行して実施される予定だが、移転時期が大きくずれ込めば、築地の輸送拠点計画そのものが揺らぎかねない状況。「千客万来施設」や「築地再開発」などの問題も複雑に絡み合い、移転延期を決めた小池都知事にとって、難しい判断が迫られている。