来るべき大きな災害に備えようと、夜間でも効果的な屋外専用蓄光誘導標識を作製し、特許を取得した企業がある。

 東京都中野区にある「リンコー」だ。2011年(平23)3月11日に起きた東日本大震災を契機に開発に着手。「津波注意」など、いろいろな蓄光標識を4月から順次商品化していく。

 まさに暗闇を照らす光になる。15センチ四方程度、もしくは縦10センチ、横20センチ程度の長方形のはめ込み式標識が、リンコーの事務所で暗幕を引いて電気を消すと光り始めた。「歩道の路面、通路の壁面、階段や段差部分のマーカーなど、いろいろな目印に使えます。安全な場所への誘導を助けます」と、リンコーの唐沢伸代表取締役・営業本部長(65)は説明する。

 映画館の誘導灯、腕時計など、室内で電気が消えると自然発光するものは身の回りにある。また、高速道路でSOSを知らせる電話の標識など、外の暗がりで光る蓄光製品を見かけることもある。これらの寿命(屋外耐候性)は半年足らずという。リンコーの製品は、10年以上の耐候性を持つ。「わが社の特許製品は、業界初の屋外で使用できる製品であると言っても過言ではありません」と言い切るほどだ。

 その秘密は、蓄光顔料とシリコーンやケイ素樹脂、ガラス素材との組み合わせ。太陽光を蓄える上、紫外線を浴びても劣化しないのが大きな特徴だ。無電源で発光させられる看板形式で、省エネにもなる。「津波注意」「津波避難ビル」など、注意を呼び起こす文言はいろいろ。場所に応じて使える。直径約10センチ、高さ約2センチのドーム型のライトは、1キロ先からも判別できるほど、視認性が高い。

 東日本大震災が起こった時、被災した知人から、「停電中の夜間は、車のライトや懐中電灯だけが頼りだった。切れたら大変とハラハラしていた」との話を聞いた。津波の被災地はまだまだ復旧作業が続いている。これから歩道などの整備が必要な場所も多い。

 2年前の熊本地震の本震は深夜に起きた。「いつグラッと来るか分からない。その時、真っ暗だったら何も行動できないし、命の危険にもさらされる。来るべき首都直下型地震、南海トラフ地震の前に備えておきたい」と強調した。

 津波が来ると想定される場所に埋め込むだけではなく、避難場所に指定されている公園、公共施設とその途中への道で活用できる。日常の中でも、日が落ちた後の山道などで役に立つ。人命救助と地域社会への貢献、インフラとして大きな意味を持っている。【赤塚辰浩】