2020年東京五輪(オリンピック)・パラリンピック大会組織委員会は11日、チケット戦略などを話し合う有識者会議の第1回会合を開き、小中高生に向けて低価格帯を用意するため、高額チケットを販売し、整合性を付ける方向性が意見集約された。

 早大名誉教授の加納貞彦座長は「次世代を担う若者たちは恐らく収入がないでしょうから、なるべく安くするために、高額チケットがあってもご理解いただけるのでは。国民的に受け入れられるかどうかが課題。会議ではだいたい賛同だった」と語った。

 基本方針となる「(1)入場料収入の最大化を図る」「(2)メリハリのある座席種類・価格設定で次世代を担う子どもの来場を増やす」「(3)選手に熱狂空間を提供するため満員の会場を実現」「(4)パラリンピックの価値を幅広く共有する」という4項目も確認された。

 価格は大きな関心事項となる。組織委の資料によると割引チケットを除き、12年ロンドン五輪の最高販売額は開会式の約28万9730円(2012ポンド)、最低額は陸上、バスケットボール、バドミントン予選などの約2880円(20ポンド)だった(1ポンド=144円、17年2月24日時点)。

 16年リオデジャネイロ五輪では最高額が開会式の約16万1000円(4600レアル)、最低額がホッケー、サッカー予選、レスリング予選などの約1400円(40レアル)だった(1レアル=35円、同)。

 会議では「企画チケット」案も多く出た。一例として、学校単位で購入してもらう仕組みなどが挙がった。ロンドン大会では「ペイ・ユア・エイジ」と題して、10歳なら10ポンドというように、子どもたちの年齢に応じた価格で販売するというユニークな施策を実施した。1~16歳が対象で、全競技ではないものの220種類のチケットで適用された。東京大会でも、子ども向けや学校単位、付加価値をつけたチケットの企画を今後、練っていく。

 会議の副座長にはプロ野球巨人の久保博会長が就任。不人気競技をどのように満員にするかとの問いに「五輪はトップブランドだが個々の競技を見てみるとそうではないものもある。そこは腕の見せどころ。観客が満員だと選手のパフォーマンスは全然違う。(満員にするのは)ホスト国の責任だ」と意気込んだ。

 組織委にとってチケット売り上げは収支均衡の予算達成のためにも重要課題となる。立候補ファイルでは、五輪で780万枚・773億円、パラリンピックで230万枚・47億円という売り上げ計画を立てた。プロ野球1球団が1シーズンで約200万枚といい、東京大会ではその4、5年分を約1カ月間で販売する計算になる。

 成功例として挙がるロンドン大会では1080万枚・1037億円、リオ大会では821万枚・509億円(前出為替レート)の売り上げだった。五輪が販売率97%、パラリンピックが同98%だった。

 今後は来月15日に2回目の有識者会議を開きチケット販売の基本方針をまとめる。7月に販売価格などを国際オリンピック委員会(IOC)へ提出し承認を得て、来春に一般販売を開始する予定。