【ロンドン=鈴木雅子通信員】英王室の次男ヘンリー王子(33)と、米女優メーガン・マークル(36)は19日、ロンドン郊外ウィンザー城の礼拝堂で結婚式を挙げた。英王室男性と米国人女性の結婚は約80年ぶり。アフリカ系の血を引くメーガン妃の影響か、ゴスペルの合唱が披露され、黒人の司教がキング牧師の言葉を情熱的に語るなど、王室の伝統にとらわれない演出が施された。同妃は王子に禁煙を指南するなど、早くも“かかあ天下”の雰囲気。一方、幼くして母ダイアナさんを失った王子の幸せを、英国全体が祝福した。
メーガン妃は、やらせ撮影問題などで式を欠席した父に代わり、王子の父チャールズ皇太子(69)に付き添われ、王子のもとまでバージンロードを歩いた。初披露されたウエディングドレスは、デコルテを強調したシンプルなデザイン。軍服姿の王子と手をつなぎ、ほほえみ合った。
式では、伝統的な誓いの言葉「(新郎に)従う」を使わず、「愛し、慈しむ」と述べた。その姿を、アフリカ系米国人の母ドリアさんが見守った。途中、ベン・E・キングの名曲「スタンド・バイ・ミー」を、ゴスペルの合唱隊が歌った。王室では異例の選曲だが、伝統にとらわれない2人の意思が反映された。黒人の司教はキング牧師の言葉を引用しながら説教した。
約1時間の式後、2人は礼拝堂の外で、群衆の前で「ロイヤルキス」。馬車で城周辺を約20分間パレード、約12万人に祝福された。
披露宴もメーガン色全開だった。ウエディングケーキは伝統のドライフルーツではなく、20キロのバタークリームとレモン、エルダーフラワーを使用。妃と同じ米カリフォルニア出身の女性パティシエが手がけた。
ゴールインには紆余(うよ)曲折あった。王子はモデルなど多くの女性と交際したが、世間の目にさらされる「覚悟」に、理解が得られなかった。しかし、メーガン妃は違った。米人気ドラマ「SUITS(スーツ)」に出演した女優で、人の視線には慣れている。一方、幼少時から女性の自立に関心を持ち、慈善活動を続けた王子の母ダイアナ元皇太子妃を尊敬する。
婚約指輪は2人で訪れたアフリカ・ボツワナ産のダイヤモンドを、母の形見のダイヤで囲んだ。母の遺志を継ぎ活動する王子にとって、メーガン妃はこれ以上ない「同志」だった。
メーガン妃は13年に米プロデューサーと離婚。人種差別的な観点や離婚歴から、結婚に批判的な声もある。ただ、国民とともに歩む英王室を目指す王子は、多様性の象徴でもあるメーガン妃を迎え、新たな王室を目指す。年上のメーガン妃は王子を禁煙させ、ダイエットも指南。約3キロやせて式に臨んだ夫の顔を、いとおしそうに見つめ続けた。