安倍晋三首相は28日、森友&加計学園問題に関する国会の集中審議で、加計学園の面会を記し、従来の首相答弁を覆す内容となっている「新・愛媛文書砲」を「伝聞の伝聞だ」と切り捨て、開き直りの反論を繰り返した。理事長との面会は、あらためて否定。文書に登場する面会の記載を「誤った情報」と主張し始めた学園の主張に、抗議も怒りもみせず、「作られたストーリー」と反撃する場面も。疑惑の真相はこの日も分からず、野党は総じて加計氏の国会招致を求めた。
「伝聞の伝聞を書いたものだ」。首相は、衆参予算委員会のモリカケ集中審議で、愛媛県が公開した「新・愛媛文書」の信頼性を疑うような発言を続けた。
同文書には、学園側から県への報告として、獣医学部新設計画に関し、15年2月15日に首相が加計孝太郎理事長と面談したと記載。計画を知ったのは昨年1月20日とする首相答弁を覆す内容だが、首相は「文書は県の担当者が私や加計氏に直接聞いた記録ではない。学園関係者からの伝聞の伝聞にすぎない」と指摘。「私と加計氏が会ったか会わなかったかは(認可に)全く関係ない」と主張した。
学園は26日になって、首相と加計氏の面談はなかったとするコメントを発表。真実なら、虚偽の情報を県に報告して獣医学部新設に至ったことになり、野党は、首相をかばうためのうそではないかと疑念を強めている。「普通はカンカンに怒るはず。なぜ平然としている」「学園に抗議しないのか」。そう問われた首相は「私はいつも平然としている」と答えて失笑を買い、「抗議の必要はない」と野党の主張をはねつけた。
首相は、激しいやじに不快感を示して答弁を渋り、「動揺しないで」と、野党に“激励”される場面も。数々の文書に書かれた内容と、否定一辺倒の首相答弁がかみ合わず「(自分の主張を)信じろと言っても無理筋だ」と指摘されると、「委員が作られたストーリー」と発言。野党を怒らせても、持論を展開した。
また、自身や昭恵夫人の関与があれば総理も国会議員も辞めるとした昨年2月の発言を、突然に修正。「『贈収賄』という文脈の中で、一切関わっていない」と、関与の範囲を贈収賄に限定。野党は首相の不自然な対応に、「ゲームのルールを後から変える言い逃れ」と反発を強めている。
モリカケ問題の鍵を握る加計理事長や首相の昭恵夫人は、依然会見していない。「(悪質タックル問題の)日大や関学大のように、夫人も会見しては」と促されたが、首相は「政治責任が伴う総理として、私が答えている」と拒否した。首相は、獣医学部新設の「プロセスに一点の曇りもない」と繰り返すだけで、7時間の質疑は堂々巡りで終了。明日30日の党首討論は45分。真相解明の道は遠い。【中山知子】