豊洲市場の初競りで史上最高額3億3360万円で競り落とされた青森・大間産の一番マグロが、一夜明けた6日、早くも売り切れとなった。

落札した喜代村(東京)が運営する「すしざんまい」の築地本店では、24時間営業の深夜も行列が途切れず、午前9時に大トロ(398円)が売り切れ。11時には中トロ(298円)が売り切れた。同日夕に唯一残ったのは赤身(158円)だけ。その味はいかほどか。同店通常メニューの北大西洋産マグロと食べ比べた。

◇  ◇  ◇

早朝3時の豊洲初競りの取材から36時間後の6日午後、ようやく「3億円マグロ」実食指令が出た。大トロは売り切れで無念だが、赤身はクロマグロのうまさを最も味わえる部分とも聞く。前日には先輩の築地担当・寺沢記者が、喜代村・木村清社長から直々に中落ちを試食させてもらっている。そのリポートを超えるべく、そして「3億円」の実力を試すべく、すしざんまい看板メニューのひとつ「まぐろざんまい」(3240円)と“対決”させた。

まぐろざんまいは、全て北大西洋産のクロマグロで計13貫。この日は、北大西洋産の赤身から、鉄火巻、あぶりトロ、ねぎとろ、中トロ、大トロと食し、最後に「3億円マグロ」の赤身を食す、という高いハードルを設定した。

注文すると、「3億円マグロ」の赤身は、まぐろざんまいの中央に盛られるスペシャルな形で登場。色は濃いめの赤。だが、隣には脂たっぷり、北大西洋産の大トロがいる。見た目では、ちょっと分が悪いか。

まずは北大西洋産マグロの赤身をパクリ。あ、うまい。すっきりしているが、味もしっかりある。「3億円マグロ」は勝てるのか、少し不安に…。鉄火巻、あぶりトロ、ねぎとろは一手間加えた安定感がある。中トロは、この日は、どちらかというと赤身に近い、脂より身のうまみを感じさせるものだった。

そして北大西洋産の大トロ。いやあ、大トロだ。甘くてトロリ。普段ならこれで十分締められる。だが今日はそうはいかない。本命が待っている。

いよいよ「3億円マグロ」の赤身を口に入れる。まず食感は…思ったよりしっかりした食べ応え。赤身でもとろける、と予想しただけに意外だった。

ただここからが「3億円」の底力。かむとじわじわと、だが強いうまみが出てきた。例えは変だが、上質のロース肉のような味わい。大トロの後であっても、パンチ力は負けていない。さすが3億円、といった感じだ。しっかりかみしめると、数秒で胃袋に消え、海の味、ともいうような余韻が残った。

「3億円マグロ」は4日早朝に釣り上げられた。板前さんによると、本来はあと2日ほど寝かすと、脂が回って、より味が良くなるという。ただ「縁起物だし、お客さんは待ってくれないしね」と、板前さんも苦笑い。「おいしかったでしょ?」と言われ、思わずうなずいた。

食事中には、隣のカウンターに座ったおひとり様の美熟女が、座るなり「大間のマグロ!」と第一声。熱かん片手に「マグロ食べました?」とこちらにも声をかけてきた。30分ほどの滞在だったが、店員が電話で「赤身だけ残ってます」と問い合わせに答える場面も数回。「3億円マグロ」が放った熱気は、やはり高かった。【大井義明】