私的な投資の損失を日産自動車に付け替えたとして特別背任容疑で再逮捕された、前会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)の勾留理由開示手続きが8日、東京地裁で開かれた。昨年11月19日に金融商品取引法違反の疑いで逮捕後、初の公の場で、ゴーン容疑者は「私は無実だ」と声高に訴えた。弁護人によると、接見の際は心情を吐露せず、取り調べの対処法を尋ねるなど、妥協なき合理化を目指した経営者らしい顔を見せているという。弁護側は同日、勾留の取り消しを東京地裁に請求した。
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50日を超える勾留のダメージからか、白髪が増え、頬がこけた印象のゴーン容疑者だが、鋭い眼光と力強い口調は日産を再建させた辣腕(らつわん)経営者のままだった。スーツにノーネクタイ、スリッパ姿で出廷。多田裕一裁判官から「会社役員か」と聞かれると英語で「その通り」と答え、10分間、与えられた意見陳述でも英語で思いを語った。
自身の資産管理会社と新生銀行との間で結んだ「スワップ取引」の契約者を、08年のリーマン・ショック後に日産に変更し、約18億5000万円の評価損を付け替えた容疑について、損害を負わせない範囲で一時的に担保の提供を要請したとし「日産に一切、損害を与えていない」と強調した。
信用保証に協力したサウジアラビア人の知人、ハリド・ジュファリ氏の会社に、子会社から1470万ドル(現レートで約16億円)を入金させた件についても「(同氏は)日産に対し極めて重要な業務を推進した。関係部署の承認に基づいた相当の対価」と説明。「自分にかけられている容疑は無実であり、確証も根拠もなく、不当に勾留されている」と訴えた。
その上で「日産に心からの親愛と感謝の気持ちを持っている。全力を尽くし、公明正大かつ合法的に業務を推進してきた」とも強調。意見陳述の最後には「人生の20年を日産の復活にささげてきた。その結果、従業員とともに日産を日本経済の主軸に回復させた。それは、家族の次に自分の大きな喜びである」と熱く語った。
勾留理由開示手続き後、都内の日本外国特派員協会で会見を開いた大鶴基成弁護士は、接見の際、冷静かつ極めて合理的なゴーン容疑者の顔を明かした。質疑応答で拘置所内での様子を聞かれると「『広い部屋になった。ベッドになっている』と言うので、そうだろう」と答えた。その上で「ベッドが狭いなどの話は、大使館の方にはされたかも知れないが弁護団にはしなかった」と続けた。
そして「我々には取り調べの内容について語り『どう対応すればいいのか?』と聞いてくる。心情を吐露することもなく冷静に対応されている。50日、接見しているが合理的で2時間半の接見時間を有効に使う」と感心した。拘置所内でも日産を合理化した経営トップの顔を見せるゴーン容疑者。勾留のさらなる長期化が予想される中、塀の外の空気を吸い、今後へどう頭脳を巡らしているのか?

