任期満了に伴う山梨県知事選は27日、投開票され、自民党が総力戦で支援した元衆院議員長崎幸太郎氏(50)が、野党が支援し再選を目指した現職の後藤斎氏(61)ら3人を破り、初当選した。自民党に逆風が吹いてきた12年に1度の「亥(い)年選挙」の初陣で、終盤まで長崎VS後藤の激戦だったが、自民党が強引なまでの組織戦で制した。第1次政権時代の亥年選挙が退陣につながった安倍晋三首相も、胸をなで下ろした格好。投票率は57・93%(前回比16・08ポイント増)。

安倍政権の行方を左右する上でも注目された、今年初の与野党決戦。44年ぶりの独自候補擁立にこぎつけた自民党が、1強の組織力で制した。当確一報後、長崎氏は「山梨を前進させたいとの思いで大同団結ができた」と、勝因を語った。

長崎氏は二階俊博幹事長に近い。17年衆院選で落選も二階氏の支援で知事選出馬にこぎつけた。ただかつての地盤、山梨2区では同じ自民党の堀内光雄氏、後継の堀内詔子衆院議員と約15年、身内同士で公認争いを続けた。しこりは消えず、二階氏主導の擁立に反発した自民党山梨県連の顧問らは公然と後藤氏を支援。保守分裂選挙に陥った。

この状況に自民党は、国政選挙並みの異例の支援体制を敷いた。二階氏は約150人の所属国会議員に応援を指示。「出欠を取る」とまで迫った。昨秋の沖縄県知事選も、総力戦を展開しながら惨敗。側近長崎氏の勝敗は、自身の求心力にも影響しかねなかった。

終盤まで横一線の接戦だったが、最後は自民党が組織力でねじ伏せた。菅義偉官房長官、小泉進次郎厚労部会長ら幹部が連日応援に入り、長崎氏は「県政の停滞を招いた」と批判して、後藤氏を引き離した。

長崎氏と敵対してきた堀内家、堀内詔子氏が所属する岸田派の岸田文雄政調会長も、「和解」して支援。ポスト安倍を目指す岸田氏は、過去の恩讐(おんしゅう)を乗り越えた勝利への貢献も求められていた。

統一地方選と参院選が同じ年に行われる「亥年選挙」は、自民党に逆風が吹いてきた。前回の07年、参院選で敗れた第1次政権時代の安倍首相はその後退陣。毎月勤労統計の不正調査などマイナス材料も乗り越え、勝利した意味は大きい。

一方、後藤氏は前回、与野党相乗りで初当選したが、今回は立憲民主、国民民主両党が推薦。保守系の支援を見込んで政党色を出さずに戦ったが、共産系候補にも票が流れた。参院選1人区の野党統一候補擁立に向けたモデルケースにならず、今後に課題を残した。