4月1日に日本の囲碁史上最年少の10歳0カ月30日で初段になる、小学4年生の仲邑菫(なかむら・すみれ)さん(9)が30日、韓国・ソウル郊外の城南市で、9歳7カ月5日の世界最年少記録でプロ入りした、韓国囲碁界の“王様”曺薫鉉(チョ・フンヒョン)九段(65)と対局し、敗れた。

菫さんは対局を前にした会見で、笑みを浮かべつつ、得意のハングルで「少し、緊張しています。一生懸命頑張ります」と口にした。緊張をほぐす意図からか、この日は靴を脱ぎ、そろえて床に置いて対局に臨んだが、碁盤を前にすると表情は一変。鋭く、射るような視線で、曺九段と碁盤を見詰めて先手を打った。

ただ、世界最多1949勝とタイトル160冠を誇る、曺九段はやはり強かった。菫さんが考える間もなく、すかさず手を打ってくる攻勢に押され、菫さんは約1時間後に投了した。今の気持ちは? と聞かれた菫さんは、悔しかったからか答えずに沈黙した。楽しかった? 強かった? と聞かれるとうなずき、もっと強くなりたいかと聞かれると「はい」と答えた。

年齢差56歳の対局は、おじいちゃんと孫の対戦と言っても過言ではなかったが、2人には共通点があった。曺九段は4歳で囲碁を始め、9歳で韓国棋院の初段となると、その後、1963年10月に10歳で来日し、瀬越憲作名誉九段の元に内弟子に入って9年、修業した。一方、菫さんは、7歳から韓国で囲碁修業を継続している。曺九段は「菫さんのことはニュースで少しだけ見ていました。自分の昔のことを思い出しました」と語った。

曺薫九段は、韓国のインターネットサイト「ハンゲームズ」の取材に「当時の自分より、菫さんの方が上手です。もう少し細かい部分を磨けば、かなり優れた棋士になるだろう。囲碁は強くなればなるほど、難しくなるもの。頑張って勉強して欲しい」とコメントし、菫さんの今後に期待した。

曺九段は兵役のために帰国後は、韓国棋院に所属し世界最強の棋士となり、16年には囲碁のプロ棋士として初めての国会議員にもなった。世界の囲碁界を代表する大物からのエールに、菫さんは笑みを浮かべた。

今回の対局は、韓国の囲碁専門テレビ局「Kパドゥク」の企画として行われた。韓国囲碁シニアの“4大天王”と呼ばれる曺九段、徐奉洙(ソ・ボンス)九段(65)、劉昌赫(ユ・チャンヒョク)九段(52)、曺九段の弟子で世界戦最多18回優勝の記録を持つ、李昌鎬(イ・チャンホ)九段(43)が、23日に菫さんと対局して勝った崔精(チェ・ジヨン)九段(22)、呉侑珍(オ・ユジン)6段(20)、金彩瑛(キム・チェヨン)五段(23)の女流棋士4人と対局するもの。旧正月の2月3日から6日まで連日、午後2時から放送され、菫さんと曺九段の対局は同3日に放送される。