政府は1日、「平成」に代わる新元号を「令和(れいわ)」と決定した。「大化」以降、248番目で、現存する最古の歌集、万葉集が出典。国書(日本古典)からの採用は初めて。

事前の有識者会議では6の案が示されたが、「国書」採用には、安倍晋三首相の強いこだわりも。首相は、万葉集が「ブーム」になるとの見方も示した。発表をめぐっては、事前に情報が漏れないよう、官邸があらゆる防止対策を講じ、厳戒態勢下でお披露目された。5月1日、新天皇に即位する皇太子さまのもとで、「令和」の時代が幕を開ける。

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「新しい元号は、令和であります」。菅義偉官房長官は会見で、墨書きされた「令和」の書を掲げた。初めて、日本古典である国書からの採用。厳寒の後、花咲く梅の様子に触れた「序文」から引用された。万葉集は皇室ともゆかりが深く、天皇陛下の長女、黒田清子(さやこ)さんの「清子」と称号の「紀宮」は万葉集が出典とされる。「令」の元号への採用も初めて。

首相も自ら会見し、意義を説明した。「平成」発表時の89年に比べ、首相の会見が珍しくないことを、自ら語る理由とした。「人々が心を寄せ合う中、文化が生まれ育つ意味が込められた。厳しい寒さの後、春の訪れを告げる梅のようにそれぞれの花を咲かせる。そんな日本でありたいと思いを込めた」と話した。

首相のコアな保守支持層には、日本古典が典拠となることに期待があったが、首相自身も国書にこだわりがあった。「国書がいいよね。『記紀万葉』から始まるんだよね」。昨年末、古事記や万葉集を例示しながら、日本古典を典拠とする意欲を、側近に示した。

「和」にもこだわってきた。十七条憲法の一節「以和為貴(和をもって貴しとなす)」を、色紙に何度も書いた。新元号の選考作業はこの日、有識者9人への意見聴取から始まったが、事実上、首相の腹は決まっていた。全閣僚会議では「国書の中から出すべきだ。令和でいいのではないか」と、自ら議論を収めた。

有識者には、中国、日本の両古典を含めて6の原案を五十音順に書いた紙が配られた。E、Kから始まる案もあったという。令和は最後だったが、作家の林真理子さんによると、「1番人気だった」という。

首相は夕方以降、民放やNHKの番組でも、決定の意義を説明。有識者の議論に関し「全員から『国書から今回は選ぶべきだ』との意見があり、多くの方が令和を支持した」と述べ、「令」が「命令」を思わせるとの批判を念頭に、「良い、優れているの解釈だ」と反論した。3月に入った時点で、初めて「令和」を目にしたことも明かした。

一方、官邸は新元号が事前に漏れないよう、厳しい情報管理態勢を敷いた。有識者は会議の間、携帯電話を預け、官邸内では携帯電話の電波が通じにくくなる現象も起きた。衆参両院正副議長への意見聴取では、赤松広隆衆院副議長が、携帯電話を預かるなどとした文書が事前に出されたことに抗議。菅氏は謝罪した。

新元号は閣議決定後、宮内庁を通じ、天皇陛下と皇太子さまに報告された。「陛下はいつものような表情」で、皇太子さまはにこやかな表情で「分かりました」とうなずかれたという。