日産自動車の前会長カルロス・ゴーン容疑者(65)が22日、オマーンの代理店側に支出した日産の資金を私的流用し、約5億6300万円の損害を与えた会社法違反(特別背任)容疑で東京地検特捜部から追起訴されたことを受け、弁護団の弘中惇一郎弁護士(73)が報道陣の取材に応じた。

同弁護士は、東京地裁に保釈請求したことを明らかにした上で、地裁の判断が出るタイミングは「おそらく、明日だと思っています」と語った。

保釈請求が却下された場合、27日からのゴールデンウィーク10連休にかかってしまう。その間、ゴーン容疑者に接見できるのかと聞かれると、弘中弁護士は「土曜日は許可すれば接見できますが、日曜、休日は基本的に接見できないと思う。我々は保釈になるだろうと思っているので心配していない」と答えた。

弘中弁護士は、この日午前にゴーン容疑者に接見したとし、「ギリギリ、昨日の夜まで取り調べがあったようですから、その辺の確認と午後に起訴されるだろうことを前提とした確認、打ち合わせを行った」と語った。

ゴーン容疑者の様子については「元気でした」と述べた。高野隆弁護士が21日、ブログで5日から21日まで、連日行われた取り調べが72時間に及んだことを明かしたが、弘中弁護士は「(ゴーン容疑者は)今の状態に決して満足していないと思う。もちろん、きつかったと思うが、今日の時点で取り調べは終わった前提ですので、こぼしたりはしていない」と答えた。

保釈条件については、保釈が認められた3回目の保釈請求の際と変えていないという。報道陣からの、キャロル夫人をはじめ家族との接見禁止が出たら? との質問には「保釈を認めていただくのが最優先。要件が気に入らないから申請を取り上げるということはあり得ない」と語った。

4度目の追起訴で、一連の事件の捜査が終結するか? と聞かれると「終結するというのは検察の判断ですが、流れからすると、そうなんでしょう。特に、それ以外のところで調べられてきた印象はない。これで一区切りだと理解しています」と答えた。

地裁から初公判は9月ごろに始まるとの見通しを示されていたが、弘中弁護士は「少なくとも秋口というのは、いろいろな意味で無理だろう」との見通しを語った。

また、4回目の逮捕について総括を求められると「追起訴されること自体はとやかく言う話ではないが、逮捕の必要性があったとは思えない。しかも黙秘が続くことが分かりながら、執拗(しつよう)に取り調べを続けることは、身柄を無理やり取って自白を強要しているに等しい」と、あらためて批判した。

今回の逮捕に伴う検察側の押収、捜索自体が違法で不当なものだったとも主張。「キャロルさんのパスポート、携帯電話、パソコンを、ゴーンさんの所有物という前提でやっているので(キャロル夫人に)任意提出を求めていない。誰が考えてもあり得ない話だし、パソコンに対してもキャロルさんにパスワードを聞き出している。他人の持ち物を、ゴーンさんのものだと偽って、いわば裁判所をだまして持ち去り、しかも中にあった情報を元にして取り調べを行っている。いわば盗み出したものを使って捜査するというのは大変、遺憾」と批判した。

日産が東京地検に刑事告訴した件について聞かれると「話題にもしていません。日産と検察は一体となってやっているわけだから特別、関心はありません」と意に介さなかった。