同居していた80代の父親とみられる遺体を公営アパートの自宅に放置したとして、警視庁立川署は24日までに、東京都国立市の無職高橋直良容疑者(49)を死体遺棄の疑いで逮捕した。

署では、容疑者は父親の年金で生活し、自宅に引きこもり状態だったとみている。事件の背景には、高齢の親が引きこもりの中高年の子供の生活を支える中で生じる「8050問題」があったとみられる。

   ◇   ◇   ◇

逮捕容疑は8日ごろ~21日、都営アパートの寝室に遺体を放置した疑い。立川署は遺体は高橋容疑者の父親とみて、調べている。容疑者は「6月8日夜ごろ、父親が死んでいた。遺体を放置したのは間違いない」と容疑を認めている。遺体を放置した理由について「これから起きることを考えたくなかった」と供述している。21日、近況確認で自宅を訪れた国立市職員が異臭やハエなどに気付き、警察に通報した。

署によると、容疑者は父親と2人暮らし。仕事に就かず、父親の年金で生活していた。容疑者は、好きな女性アイドルグループのコンサートには行っていたと話しているものの、自宅に引きこもった生活を送っていたとみている。

地元のシルバー人材センターによると、父親は同センターに会員登録。3月末まで広報誌の配布の仕事を行っていた。4月以降も会員登録はしていたが、仕事はしていなかったという。

以前から、父親は経済的に困り、仕事に就いていない容疑者の生活も心配していたとみられ、父親からの相談を受けた国立市は、定期的に父子の支援を行っていた。市担当者は「(父親から)経済的な困り事や息子さんのことを含めた生活などの相談は受けていた」と話している。

市は容疑者の自立に向けた支援も行っていたといい、父子の自宅で2人と面談したり、容疑者との個別面談も行っていたという。以前は父親と連絡を取っていたが、4月以降は電話がつながらず、何度か自宅訪問したものの、不在だったりと、連絡がつかない状態が続いていた。【近藤由美子】

◆8050問題 高齢の親が無収入の引きこもり中高年の面倒を見続ける中、親に要介護者となったり、経済的に苦しくなるなどの諸問題を指し、社会問題となっている。「8050」は双方の年代から取り、大阪府豊中市社会福祉協議会福祉推進室長の勝部麗子氏が名付けた。内閣府の調査では40~64歳の中高年で引きこもりの人は推計61万3000人で、若年層(15~39歳)の54万1000人を上回るとされる。