金沢市の星稜高校から車で約15分。奥川恭伸投手が今年の1月に祖母と食事に訪れた「第7ギョーザの店」は、1日に1万6000個のホワイトギョーザを売り上げる大人気店。

従業員の水田久恵さん(66)は「テレビも全部録画して、新聞も切り取ってスクラップしている」というほどの奥川ファンだ。

来店時のことを「会計の時に、まだ選抜に決定していないのに、『甲子園頑張ります!』といきなり言ったんです」とうれしそうに振り返った。祖母に「コレ!まだ決まっていないのに言うんじゃないよ」と怒られていたのが印象に残っている。

奥川の印象を「元気で力強い。優しさがあって素直」と評した。店は松井氏も何回も足を運んだ名店。そんな松井氏と奥川を「人間的に素晴らしく、おごらない控えめなところが似ている」と重ね合わせた。星稜ナインの頑張りに「3階に80席くらいある大きな広間があるのでぜひ、野球部で来てほしい。何かサービスしたいな」とラブコールを送った。最後まで戦い抜いたナインに向け「負けたら悔しい。でも勝負は時の運。これからの方が大切です」と激励した。

星稜から5分の定食店「日和(ひより)」は創業45年。しょうが焼き定食が名物で、主将の山瀬慎之助捕手(3年)も通う星稜生の人気店。店主の棒田賢一さん(73)は「ウチの飯は勝ち飯や」と長年にわたり野球部やサッカー部の若者たちの食を支えてきた。松井氏の両親も毎週のように来ていたが「松井本人は来なかった」と笑う。

妻の千恵子さん(68)はサッカー部が日本一になった時「メダルをかけてもらったんです」とうれしそうに振り返る。山瀬は「自分たち野球部が、そのスペースをもらいます」と宣言し、甲子園に出発したという。結果は惜しくも準優勝に終わったが、千恵子さんは「勝利の女神が来なかったね。残念だが、しょうがない。奥川や山瀬、3年生の悔しい思いを忘れないように。来年こそは額縁のスペースを奪えるように頑張りなさい」とエールを送った。【佐藤勝亮】