ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)と、伊藤さんから15年4月に性的暴行を受けたとして1100万円の損害賠償を求めた民事訴訟を起こされ、東京地裁から330万円を支払うよう命じる判決を言い渡された元TBSワシントン支局長の山口敬之氏(53)が判決から一夜明けた19日、都内の日本外国特派員協会で会見を開いた。先に行われた山口氏の会見を伊藤さんが取材するなど異例の会見は、互いが主張を言い合う“法廷外バトル”となった。

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午後1時、山口氏が会見場に入ると伊藤さんが記者席に着席した。判決が世界各国で報じられるなど注目度も高く、会見には海外メディアが多数、姿を見せた。山口氏は冒頭、英語で発言し控訴すると明言した。

山口氏の弁護士は、伊藤さんが避妊のためにピルを飲み5日後に月経があったと医師に申告し、医師が妊娠の可能性がほとんどなくなったと診断したのに山口氏に対して妊娠の不安を何度も訴えたなどと指摘。山口氏は「人間性を攻撃したいとは思わないが、私は真実を述べている。伊藤さんはウソつきの常習犯」と英語で批判。性行為についても「仕事をあげるからセックスをさせろというやりとりは一切ない」と主張。会見後も「明確に合意はあった。違法行為は一切していない」と断言した。

山口氏の会見中、表情1つ変えなかった伊藤さんは午後3時6分に会見場に入り、山口氏と同じように英語を交えて語った。山口氏の弁護士が例示した矛盾については「ピルを飲んだ後、出血したのは副作用だと聞いた。その後、月経が来ず妊娠の心配があった」と主張。「ウソつきと言われたことはたくさんあるけれど、既に著書で反論している」と淡々と言い返した。

伊藤さんは事件が起きたホテルのドアマンが新たな証言者として現れたと明かした。民事裁判の手続きの最終日に連絡が入り、裁判には間に合わなかったが、山口氏の控訴の意向を踏まえ「ドアマンは全て見ている。証拠として使いたい」と口にした。攻撃的な報道をする媒体に法的措置を取る意向も示した。

同じ日に同じ場所で会見し、ジャーナリスト同士として対峙(たいじ)した。伊藤さんは「お互いメディアの人間。オープンな形で、とても貴重な機会」とし、山口氏も「伊藤さんに来てほしくないという気持ちは全くなく、出来るだけオープンに、ということ」と感想を語った。ただ主張は真っ向から対立しており、新たな戦いの火ぶたが切られた格好だ。【村上幸将】