将棋の第78期名人戦7番勝負の第6局は14、15の両日、大阪市の関西将棋会館で行われ、挑戦者で先手の渡辺明2冠(36)が豊島将之名人(30)を99手で破り、対戦成績を4勝2敗として名人位を初獲得した。

渡辺は名人戦初登場で、36歳3カ月での新名人は歴代4位の年長記録となった。7月に藤井聡太棋聖(18)に棋聖を奪われ、2冠に後退したが、王将、棋王と合わせて現役最多の3冠に復帰した。

終局後のインタビュー。渡辺は「まだ実感がない。新聞とかを見て、少しずつ実感していくのかな。ピンとこないところがある」と感慨深げに話した。

東京都出身の渡辺は、00年に15歳でプロ入りし、史上4人目の中学生棋士に。20歳のとき、初タイトルとなる竜王を奪取。10年、初めて順位戦最高位のA級に昇級したが、結果を残せず、18年には8期守ったA級からB級1組に陥落。どん底を味わった。それでも同組で12戦全勝でA級に復帰し、今期は9戦全勝で念願の挑戦権を手にした。まさにV字回復だった。

名人戦への挑戦権を争うA級在籍経験がない史上5人目の中学生棋士の藤井聡太棋聖を除けば、これで中学生棋士4人が名人を獲得した。藤井ら若い世代の波も押し寄せる。渡辺は「少し休んで次に備えたい」と話した。【松浦隆司】