野口聡一宇宙飛行士(55)が15日午後7時27分(日本時間16日午前9時27分)、米フロリダ州ケネディ宇宙センターから打ち上げられた民間宇宙船スペースX社の「クルードラゴン1号機」に搭乗し、3度目の宇宙へ飛び立った。打ち上げは成功し、日本時間17日午後、国際宇宙ステーション(ISS)にドッキングする予定だ。機体は、従来の宇宙飛行のイメージを一新する、超未来型宇宙船。野口さんはどんなメッセージを送ってくれるのか。

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野口さんは出発前、朝食に験担ぎの「カツカレー」をたいらげ、「娘の影響で観ている」という大ヒットアニメ「鬼滅の刃」を意識したポーズをきめ、搭乗した。2005年のスペースシャトル(米)、09年のソユーズ(ロシア)以来のISS長期滞在。「55歳でも過酷な船外活動に挑戦したい」と、3度目のミッションに意欲全開だ。

クルードラゴンには野口さんら4人が搭乗。打ち上げから約12分後、予定の軌道に投入された。新型コロナウイルスに打ち勝つ願いから「レジリエンス(回復力)」と命名された機体。宇宙ビジネス新時代の到来をにらんだ、初の民間有人宇宙飛行船だ。

ジェット旅客機で移動する感覚で地球や月の軌道周回、火星到達を目指すなどの「宇宙旅行」を目標に開発された。打ち上げ成功は、国家主導から民間参入による新しい宇宙ベンチャーの幕開けに道をつなげた。

宇宙飛行士のスタイルも一新した。「スターマン」と名付けられたワンピース型宇宙服は、デザイン重視。ハリウッド映画「バットマン」などの衣装担当がデザインしたスタイリッシュさで、野口さんも「これは軽い」と絶賛する。従来の宇宙服はぶかぶかのシルエットが特徴で、ヘルメットや手袋などの各パーツが頑丈な金属で接合され、動きづらさは「ヘビー級」。しかし、「スターマン」は進化した。体形に合わせた立体裁断によってスリムで軽く、動きやすい。また3Dプリンターで製作された軽量ヘルメットや手袋、ブーツが一体成形されている。

船内の機器の操作はタッチパネル式で、手袋をしたまま画面操作が可能。船内もデザインが優先され、座席は電動リクライニング式、フットレストや読書灯も完備。どこまでも快適だ。

開発したスペースX社は、電気自動車「テスラ」で知られる世界的ベンチャー企業の創業者イーロン・マスク氏が02年に創設。今回の打ち上げ用ロケットは海上の収容船に着艦させ、再利用することで大幅なコスト削減を可能にした。現実味を帯びる宇宙旅行へ、多種多彩なアイデアがちりばめられたこの空間に、野口さんは半年間滞在。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた実験などに取り組む予定だ。【大上悟】