新型コロナウイルス対策が最大の焦点となる通常国会が18日、召集され、菅義偉首相が施政方針演説を行った。

菅氏は「最前線に立ち、難局を乗り越えていく」などと決意を強調したが約45分間でコロナ対策について語ったのは約10分で新しい具体策はなかった。東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの開催は大前提、東日本大震災からの復興や自身の政策について自画自賛する内容に終始し、野党側から批判の声が上がった。

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コロナ禍の危機に直面する国民に響かない、菅首相の朗読会だった。約45分間におよぶ演説は自画自賛で始まった。「内閣総理大臣に就任し、政権を担って4カ月、直面する困難に立ち向かい、この国を前に進めるために、全力で駆け抜けてまいりました」。

コロナ対策の遅れについて反省の弁は一切ない。肝心要のコロナ対策は冒頭の約10分間で終わった。感染源と名指しする飲食店への時短要請や補償など経済政策、新型コロナ特措法の改正案などを語ったが、実効性のある新たな具体策は何もなかった。「もう終わりですか?」と、野党席から冷めたやじが飛んだ。

菅氏、肝いりのデジタル庁の創設、マイナンバーカードの普及、携帯電話料金の値下げ、NHK受信料の引き下げなどが朗々と語られたが、コロナ対策の前には違和感が漂う。東京五輪・パラリンピックは判で押したように「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」と言い放った。

終盤にも「未来への希望を切り開くため、長年の課題について、この4カ月間で答えを出してきました」とさらに自画自賛。一方で、安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭の費用補てん問題に関しては自らの答弁について陳謝したが、これで幕引きの懸念すら感じさせた。

菅氏初の施政方針演説の文字数は約1万1000字で、昨年1月に安倍前首相の約1万600字から約400字増えたが、中身は薄い。菅政権のコロナ対策は迷走と混迷を続けている。昨年12月16日をリミットとした「勝負の3週間」が成果なかったにもかかわらず、昨年の大みそか会見では緊急事態宣言には否定的だった。3日に小池百合子都知事ら1都3県の知事から直訴を受けるや7日に1都3県に再発令した。それでも発令地域の拡大に否定的な抵抗姿勢を示しながら、13日には11都府県に拡大するなど、二転三転した。過酷さを増す医療現場、限界が迫る病床数など医療崩壊が現実味を帯びる中で国民の不信感、不満は収束しそうにない。【大上悟】