菅義偉首相は23日夜、東京、大阪、京都、兵庫の4都府県に対し、3度目の緊急事態宣言を発令した。

25日から5月11日までの「短期集中」で諮問された新型コロナウイルスに関する基本的対処方針分科会は、早期解除に慎重論が多数派を占めた。最終的に政府が押し切る格好で了承され、対策本部で正式決定した。5月11日解除ありきの発令に専門家からは「延長」の可能性を指摘する声がすでに上がっている。

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「短期解除」を大前提とする政府と、「慎重派」が多数を占めた専門家のやりとりは「押し切り」で政府に軍配が上がった。

3度目の緊急事態宣言は25日から来月11日までの17日間の短期決戦。政府から諮問を受けた23日午前の分科会で専門家からは、短期解除に慎重論が相次いだ。

分科会の尾身茂会長は「多くのメンバーが、(5月11日に)無条件で何が何でも解除するという意見はなかった」と、慎重論が多数派だったことを明らかにした。

菅首相は夜の記者会見で「このまま手をこまねいていれば、大都市における感染拡大が国全体に広がる」とした。「効果的な対策を短期間で集中して実施をする」と説明し、「再び、多くのみなさまにご迷惑をおかけすることになる。心からおわびを申しあげる」と陳謝した。

だが、専門家は発令前から解除延長の可能性を指摘する。尾身会長は「5月11日までにステージ3になっていなければ、延長もあり得る」との認識を示した。大型連休を迎え、列島の人流は活発化が予想され、感染爆発の警戒感は高まる。

短期解除にも尾身会長は警鐘を鳴らす。21日の国会答弁で、私見としながらも緊急事態宣言の期間は「3週間は最低、必要だと思う」と明言した。昨年4月、初の緊急事態宣言は約1カ月半(49日間)、今年1月発令の2度目は延長され、約2カ月半(74日間)だっただけに、今回は圧倒的に短期間だ。

この日の国会で野党から、2度目の緊急事態宣言(3月21日)の解除は同25日からスタートした聖火リレーに水を差さないよう前倒しされ、今回は5月17日に来日するIOCバッハ会長に配慮した可能性を指摘された。菅首相は会見で「聖火リレーがあるから解除したとか、しないとか、まったく関係ない」と気色ばんで否定したが、五輪開催に前のめりだ。

短期決戦で感染拡大が抑えきれず、延長となれば、東京五輪・パラリンピック開催への懸念は、さらに深刻化する。【大上悟】