10日に82歳で亡くなった漫画家の水島新司さんの代表作の名前を冠した居酒屋「あぶさん」(東京・四谷)が25日、約2週間ぶりに営業を再開した。店主の石井和夫さん(72)の身内で新型コロナウイルスの陽性者が出たため「家でおとなしくしていました。その間に水島先生がお亡くなりなったことを知った。安らかに…」と、追悼の意を表した。

コロナ禍により、東京都は21日からまん延防止等重点措置を適用した。「開けたけどお客さんは来るかな」と石井さんは話していたが、お酒を提供できる午後8時までに7人が来店した。そのうちの1人で15年の常連・穂積祥一さん(49)は「お店が無事に再開したことと、水島先生への献杯で来ました。水島漫画は文化です。僕らが後世に継承していきたい」とビール瓶を持って天に向けた。

あぶさんは1986年(昭61)6月30日の開業。知人の紹介で水島さんが監督だった草野球チーム「ボッツ」の助っ人として石井さんが加入したのがきっかけ。当時、石井さんは四谷で飲食店の店長をしていたが、独立して自分の店を持ちたいと考えていた。そのころ、水島さんに酒好きの主人公の「あぶさん」を店名にしたい気持ちを伝えると快諾してくれたという。それからというもの、「水島さん公認の店」として多くの野球選手や関係者、野球ファンに支持されている。【寺沢卓】