将棋の第80期名人戦7番勝負第5局が28、29の両日、岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」で指され、先手の渡辺明名人(38)が挑戦者の斎藤慎太郎八段(29)に勝ち、4勝1敗で防衛し、3連覇を果たした。ゆるぎない強さを見せて、棋王とともに2冠を堅持した。2期連続挑戦の斎藤は第3局を制したが、初の名人獲得はならなかった。

3連覇を目指す渡辺の3勝1敗で迎えた第5局。戦型は角換わり。序盤から渡辺が果敢に仕掛け、ペースを握った。斎藤は粘り強い指し手で応戦したが、最後は渡辺が斎藤玉を詰まして勝ち切った。

名人はすべての棋士が憧れる特別なタイトル。超能力を持つ漫画の主人公に風貌に似ていることから「魔王」の異名を持つ渡辺が強さと貫禄を示した。

◆第81期名人戦・順位戦A級の見どころ 藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖)がA級に初参加する。豊島将之九段、永瀬拓矢王座ら最上位の9人とどう戦うかに注目が集まる。藤井は初戦で日本将棋連盟会長の佐藤康光九段と対戦する。藤井の順位戦の通算戦績は49勝3敗と圧倒的な強さを誇り、1期目から挑戦争いに絡む可能性は高い。挑戦権を獲得し、来年4~6月に開催予定の名人戦で渡辺名人から名人位を奪取すれば、谷川浩司17世永世名人が1983年(昭58)6月に達成した21歳2カ月の史上最年少名人獲得記録を更新する。