今年のノーベル賞をめぐり、沖縄科学技術大学院大学(OIST=オイスト)に、注目が集まっている。医学生理学賞を受賞したドイツ・マックスプランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ教授が20年5月から客員教授を務めており、今年は4、9月に来日。次は来年1月に来日予定という。OISTは今年5月には、物理学賞を他2人とともに受賞したオーストリアのウィーン大アントン・ツァイリンガー名誉教授に名誉学位を授与。ゆかりのある研究者の受賞が続いた形だ。

リゾート地としても知られる沖縄県恩納村にあるOISTは、沖縄振興の一環として、世界レベルの研究拠点を目指して政府主導で12年に開学。5年一貫制の博士課程のみで、9月時点で教職員数は60カ国・地域の1080人、学生数は53カ国・地域の269人。分野横断的な教育研究を重視し、学部や学科は設けず、物理学、化学、神経科学など8つの研究分野で、89の研究ユニット(研究室)がある。「学生は1年目に3つの研究ユニットを回り、うち1つは自分の専門以外の研究を体験しなければなりません。異なる分野が交わる仕組みを整えています」(広報)など、独自の教育でも知られる。

現在の学長・理事長はドイツのピーター・グルース氏。理事には野依良治氏、吉野彰氏ら4人のノーベル賞受賞者もいる。質の高い自然科学分野の論文の割合が多い研究機関をランキングする「ネイチャー・インデックス」19年版では、世界9位、日本ではトップとなった。開学から10年を経て入学希望者も増えており、コロナ禍直前には、1学年の定員60人に対し1500人以上の応募があったという。私立だが設立の経緯から、予算はほぼ国が負担している。

地域連携にも力を入れ、地元との交流も大切にしている。現在はコロナ禍でままならないが、レストランなど施設の多くを一般にも開放し、見学などができるようにしている。子どものイベントや無料コンサートなども開催し、コロナ禍前までは年間3万人前後の訪問があったという。