プロ野球阪神タイガースの18年ぶりの「アレ」達成が目前に迫った。岡田彰布監督(65)が何度も口にした「アレ」。「優勝」を指す言葉とされるが、目標をはっきりとさせないあいまいな表現ともとれる。注目されているこの表現について、三省堂国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明氏(55)に話を聞いた。
飯間氏は「優勝」という言葉について「イメージが目の前に広がって喚起される」と話した。目標として明言することは「もちろんプラスの効果も生み出すけど、喜んでいるイメージばかりが目に浮かんで、足元がおろそかになる恐れがある」と述べた。続けて「優勝までは今日頑張らないといけないことの積み重ねですから。だから岡田監督は先のことを言わないようにしているのではないでしょうか」と分析した。
ファンも監督や選手に倣って優勝と明言するのをさけるなど「アレ」は広く浸透している。似たような言葉の使い方として、飯間氏は特定の場面で使用を避けるべきである「忌み言葉」を挙げた。「忌み言葉は非科学的なことではなくて、言葉に出すと嫌なイメージが浮かぶ。結婚式で『別れる』とか、受験生に『滑る』というような言い方は、礼儀としても避けますよね」。
言葉の持つ言霊にまで思いを致すのは、結婚する2人や受験生を大切に思い、新生活の幸せや希望校合格を祈る気持ちからだ。「アレ」という言葉にも、チームやファンの強い想いが現れている。
飯間氏は三省堂国語辞典の編集委員を務める。三省堂は18年に「三国(サンコク)」の名で親しまれる国語辞典を阪神仕様に変えた「三省堂国語辞典 第7版 阪神タイガース仕様」を販売した。アレ達成の場合、新商品が検討されるのか。飯間氏は「岡田監督の精神で、アレしたときのことは考えないほうがいいのでは」と述べるにとどめて笑った。【沢田直人】
◆飯間浩明(いいま・ひろあき) 1967年(昭42)10月21日、香川県高松市生まれ。早大第一文学部卒、早大大学院文学研究科博士課程単位取得。国語辞典編纂者。「三省堂国語辞典」編集委員。朝日新聞「be」で「街のB級言葉図鑑」を連載中。著書に「日本語はこわくない」(PHP)「知っておくと役立つ街の変な言葉」(朝日新書)など。

