JR東日本に17年間勤務し、線路の安全管理業務に携わった「ライトレール」の阿部等氏は24日、テレビ朝日系「羽鳥慎一モーニングショー」(月~金曜午前8時)に出演し、23日に東北、上越、北陸新幹線で発生した停電トラブルで終日運転見合わせとしたJR東日本側の判断に、疑問を投げかけた。「視聴者の方から苦情がくるかもしれないが、それは覚悟の上」と述べながら、古巣へのさまざまな提言を口にした。
今回の停電トラブルで、東北新幹線は東京~仙台間、上越・北陸新幹線は東京~高崎間で終日運転見合わせとなり計283本が運休。約12万人に影響が出た。
水曜コメンテーターの元AERA編集長浜田敬子氏は、各新幹線共通の駅である大宮駅以北の路線での運行は可能だったとの認識から「なぜ(以北の駅から)大宮までの折り返し運転ができなかったのか」と質問すると、阿部氏は「2001年に上野~大宮間の変電所で避雷器が故障したのを受け、大宮駅以北で折り返し運転する方針を決め、マニュアルも作った。20年以上前に。でも今回、それができなかった」と説明。「やろうと思っても、その日すぐできるものではない。何より大変なのは、運行管理システムにデータがあり全部制御しているが、それを全部、直さないといけない。その日になって1本1本手入力では追いつかず、あらかじめデータを事前につくり、大宮折り返しになったら入れ替える。事前に作っておいて初めてできる話だが、残念ながらできていない。昨日の事情からするとそういうこと」と指摘した。
JR東海の東海道新幹線でも10年前に有楽町での火災発生時、品川駅での折り返し運転が行われなかったとし「それも、あらかじめデータをつくっておいて入れ替え、事前に準備すればできる話」と述べた。
元テレビ朝日社員の玉川徹氏は「もともと国鉄はいっしょなのだから、当然(情報を共有して)準備していると思っているが、準備ができていなかったことになる。それ(の原因)は人不足か、それとも鉄道という部分での何かが下がっている?」と問うと、阿部氏は「鉄道はもうからない、駅ナカや駅ビルや沿線の宅地開発もうけなさいという報道が繰り返されている。同事業より、関連事業というものが(重視されている)」と私見を述べた。
玉川氏に「事故はいろんな理由で起こる可能性があるが、起きた後のバックアップは事前に準備できる。それができていないというのは、怠慢ということになってしまうのではないか」と指摘された阿部氏は「今回を機に、JR東日本は鉄道業界の真のリーディングカンパニーになってほしいと思っている。視聴者の方から、偉そうなことを言うなという苦情が来るかもしれなせんが、それは覚悟の上でお話しさせていただいた」と語った。自身の在籍時との違いを問われると「合理化で要員削減が着々と進んでいる」と指摘した。
各新幹線は24日朝、トラブル発生から約20時間ぶりに運転を再開している。