埼玉県行田市の、田んぼに囲まれたのどかな「展望室」がこの春、国内を代表する「タワー」に生まれ変わる。23年公開の映画「翔んで埼玉~琵琶湖より愛を込めて~」で県民の危機を救った「行田タワー」のモデル。これまで特に名前を持たなかったが、市は昨年、映画内の呼称そのままへの命名を発表。同時に東京タワー、通天閣などが参加する「全日本タワー協議会」の20番目のメンバーとして加盟を果たした。新たに「GYODA」の看板を掲げた雄姿は今月、お披露目される。
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★看板つきに改装中
2月の澄み渡った青空の下、行田タワーは「お色直し」の真っ最中だった。高さ59・65メートル。周囲にぐるりと足場が組まれた姿は、さながら発射前のロケット台である。市によると、壁面北側に「行田タワー」、南に「GYODA」の文字が掲げられるという。埼玉北部の少々地味な存在から一転、「県のランドマークへ」。市関係者の期待は大きい。
築24年。市の施設「古代蓮(こだいはす)会館」の展望室として、地元では知られた存在だったが「翔んで埼玉」を機に注目度が急上昇した。映画では大阪の象徴・通天閣に対抗できる「埼玉唯一のタワー」として登場するや、730万県民の救世主となる活躍をみせた。公開年度には、コロナ禍前の最高10万人を大きく上回る、年間約13万人が県内外から来場したという。
命名にあたり、市は昨年10月から看板設置費用をクラウドファンディング型ふるさと納税で広く募集。個人136人、企業40社から申し出があり、すでに目標額2400万円をクリアした。映画での“共演”が縁で、通天閣を運営する通天閣観光からも100万円が寄付されたという。
同プロジェクト担当の市企画政策課・高橋諒平さんは「みなさまの支援には本当に感謝です。通天閣さんのように、行田タワーも県のシンボルになれるように頑張りたい」と話した。
★今月下旬お披露目
15年にギネス認定された田んぼアート、関東平野を見渡す360度の眺望。足元には市の天然記念物「古代蓮」公園に資料館、地元名産品の販売所もある。命名の前から、すでに観光名所としての魅力は備えている。「全日本タワー協議会」への加盟により、今後は全国の“仲間”とコラボしたイベントも行われる予定だ。新たなオリジナルグッズなども検討中という市都市計画課・寺田定弘課長は「タワーに訪れていただくことで、より多くの方々に行田の魅力を知っていただければうれしいですね」。お披露目式は今月下旬。行田から全国へ-。発射準備は整った。【石井康夫】
■田んぼアート ギネスに認定
行田タワーと言えば、映画内でも登場した「田んぼアート」。08年から取り組みを始め、15年には約2・8ヘクタールの「世界最大の田んぼアート」としてギネス記録に認定された。毎年6月中旬に田植えをして、見ごろは7月中旬から収穫される10月中旬まで。制作には地元農家やボランティアら2000人以上が参加するという。昨年のテーマは「能登復興応援」で、能登の日本遺産「キリコ祭り」が描かれた。
◆行田市 北に利根川、南に荒川が流れる肥沃(ひよく)な穀倉地帯に位置。県名発祥の地として知られる同市「埼玉(さきたま)」には、稲荷山古墳など5~7世紀ごろに作られた9基の大型古墳が群集する。行田タワーが立地する「古代蓮の里」も6~8月、42種類12万株のハスが咲き誇る人気スポット。ハイシーズンはJR行田駅からシャトルバスが運行される。
市を舞台にした映像作品は多く、忍(おし)城をモデルとした映画「のぼうの城」(12年公開)、地場産業として栄えた足袋はドラマ「陸王」(TBS系=17年放送)で描かれている。67・49平方キロ。人口約7万8000人(25年2月現在)。行田(こうだ)邦子市長。
◆全日本タワー協議会 1961年(昭36)、日本3大都市圏のシンボル「東京タワー」「通天閣」「名古屋テレビ塔(現・中部電力MIRAITOWER)」の3塔で発足。現在は北はさっぽろテレビ塔から、南は別府タワーまで加盟20塔を4地区に分け活動、スタンプラリーなどのイベントを実施している。2012年開業の東京スカイツリー(634メートル)は加盟していない。

