歴史的な一戦の裏側に迫る「G1ヒストリア」の第5回は、無傷の6連勝で02年エリザベス女王杯を制したファインモーションを取り上げる。新馬戦を含む12戦に騎乗した武豊騎手(53)が、エリザベス女王杯やデビュー前の第一印象などを語った。
3コーナーで確信した。「これなら大丈夫」。武豊騎手の思い通り、4コーナーで先頭に立つと、そこからはファインモーションの独壇場だった。ムチが入らずともグングンと伸びる姿を、他馬は見つめることしかできなかった。残り200メートルで入ったムチは、内にもたれたのを矯正しただけ。余力を残したまま2馬身半差をつけ、デビューから無敗の6連勝。3歳馬が無敗で古馬G1を勝つのはJRA史上初の偉業だった。
歴戦の古馬たちを難なくねじ伏せたその圧倒的な能力を、鞍上は新馬戦の前から感じていた。「ダービーを目指しましょう」。デビュー前の追い切り後、管理していた伊藤雄二調教師にこう話した。
武豊騎手 おとこ馬だと思っててん。先生に『何言うてんねん。これ牝馬やぞ』って言われて。それくらいの馬でしたね。
デビュー戦の馬体重は488キロ。堂々とした馬格に牝馬らしからぬパワー。牡馬だと思ってしまうほどの素質馬は2歳の12月、阪神でデビューした。単勝1・1倍という断トツ人気に応えて4馬身差で圧勝。その後は翌年の夏から秋に目標を定めて、順調にステップを重ねていった。
ただ、抜きんでた強さを誇る彼女の唯一の壁は自分自身、その気の強さだった。エリザベス女王杯前の追い切りでも折り合いを欠く場面があり、陣営を心配させた。「気が良すぎるところがありましたね。気が強かった。乗るのは大変でした。パワーがすごいから」。年を重ねるごとにその気の強さを増し、調教でも競馬でも熟練の鞍上を困らせた。
04年マイルCS(9着)を最後に引退。繁殖馬となったものの、染色体異常であったため受胎はできなかった。現在は北海道浦河町の伏木田牧場に繋養(けいよう)されている。武豊騎手が今年、牝馬3冠戦線でコンビを組んだウォーターナビレラはこの伏木田牧場出身。「今年はナビレラに乗ったから、伏木田さんと話す機会があって。元気にしてますよと聞きました」。今でもかつての相棒を気にかけている。【下村琴葉】
◆ファインモーション 1999年1月27日、アイルランド生まれ。父デインヒル、母ココット(母の父トロイ)。馬主は伏木田達男氏。栗東・伊藤雄二厩舎所属。通算成績15戦8勝。重賞は02年秋華賞、エリザベス女王杯(以上G1)、ローズS、03年阪神牝馬S、04年札幌記念(以上G2)の5勝。02年JRA賞最優秀3歳牝馬。





