今週、東海地方の某主要都市に出張に行くと、ある見慣れた光景がないことに気づきました。ここ6~7年、その地方都市には毎月のように通っていますが、駅前広場の決まった場所に推定70代の高齢女性Xさん(匿名)が寝泊まりしているのがいつもの風景。朝の通勤時間になると姿を消すのは周囲への配慮でしょうか。日が沈む時間帯にまた駅前広場に戻ってきて夜を過ごしていました。

それこそ真冬などは服を何枚も重ね着し、ジャンパーのフードを頭からかぶって体を震わせていたXさん。きちょうめんな人で、バッグや紙袋など10個近い荷物は迷惑にならない場所に置いていました。その荷物の一つ、ボストンバッグにはオグリキャップのぬいぐるみが結ばれていました。競馬ファンかどうかは知りませんが、地方の笠松から国民的アイドルホースになったオグリに何らかの思いを寄せていたのは確か。オグリ同様、波瀾(はらん)万丈の人生だったと思われるXさんの姿がなかったのは初めてのことで、少し心配です。

函館記念と言えば88年(写真)。4歳馬(現3歳馬)のサッカーボーイがメリーナイス、シリウスシンボリの両ダービー馬や2冠牝馬マックスビューティなど年長馬を一蹴(2着メリーナイスに5馬身差、日本レコードで圧勝)した伝説のレース。そこにオグリキャップの姿はありませんでしたが、もしオグリが参戦していたら、同じ85年生まれのサッカーボーイと歴史に残るマッチレースになっていたに違いない。そんな架空の対決に思いをはせることができるのも競馬の魅力ではないでしょうか。

ちなみにオグリとサッカーボーイが生涯で1度だけ対戦したのが88年の有馬記念。オグリが、タマモクロス(2着)、サッカーボーイ(3着)、スーパークリーク(失格)などを退けて中央G1初制覇を飾ったレースです。その有馬記念がラストランとなったサッカーボーイとは対照的に、同世代のオグリとスーパークリークはスター街道へと突き進みます。まさに競馬はロマン。冒頭のXさんが、オグリキャップなど往年の名馬の記憶を胸に、今もどこかで元気に過ごしていることを願っています。

88年函館記念を制したサッカーボーイと河内洋騎手
88年函館記念を制したサッカーボーイと河内洋騎手