私がトレセンにいた頃には「このままだと障害レースが廃止されてしまうんじゃないか」と思った時期もありました。落馬も多いですし、馬券の売り上げも平地レースにはかないません。それでも競馬の“多様性”という意味で大事な存在だと思います。平地で活躍できなかった馬の中から、オジュウチョウサンのような新しいヒーローが生まれる可能性があるからです。

障害練習が平地のレースに生きることも多かったです。特に一本調子の馬には有効だったと思います。障害の手前ではどうしてもブレーキをかけないといけないので、緩急を教えるのにちょうどよかったからです。飛越の時に背中を大きく使わせるのは障害ならではの動きですし、それが馬にとってプラスに働く効果もあると思います。

そういう練習の中で、障害レースへのセンスや適性を見せた馬がいれば、オーナーと相談してレースにデビューさせていました。ちなみに、ウチの厩舎で唯一障害重賞を勝ってくれたメイショウブシドウは、JRA全10場重賞制覇にも貢献してくれました。

熊沢さんや高田騎手をはじめ、障害のジョッキーには平地の馬の調教も手伝ってもらっていましたし、厩舎には元騎手の嘉堂さんや林さんも助手として所属していました。彼らは難しい馬でも乗りこなしてくれましたし、追い切り日以外もトレセンにいることが多いので、困った時にとても頼りになる存在でした。

今月になって石神(深一)騎手や西谷騎手が相次いで引退を発表しており、騎手の人手不足も懸念されます。技術だけでなく根性も求められる仕事です。育成するのも難しく、競馬学校の3年だけではとても足りません。一方で、たとえば小牧(加矢太)騎手のように、乗馬の技術や経験を持つ人は強みになるでしょう。こうした人材確保の問題も、うまくクリアしてもらえればと思います。

〇…角居氏が営む珠洲ホースパークでは新厩舎が完成間近となっている。建設中の2棟のうち1棟が来月中に入厩可能となる。「まだ工事が続くので、新しく馬を入れるとなるとストレスのかかってしまう環境ですが、様子を見て入れられる馬がいれば増やせるかもしれません」と見通しを示した。