今月末で引退する調教師が語る連載「明日への伝言 ~先人から競馬界の後輩へ~」の最終回は、栗東・橋田満調教師(70)が登場する。ラストイヤーのこの1年は、月イチ連載コラム「競馬は推理 だから面白い」で管理した数々の名馬や海外遠征の経験などをつづってきた。今回は少し視点を変え、競馬場での「競馬の楽しみ方」について、夢のある提案を将来に伝える。【取材・構成=奥田隼人】

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昨年4月から、連載「競馬は推理 だから面白い」でいろんなお話をさせていただきました。ですので今回は少し視点を変えて、日本の競馬場でこんな日があってもいいよね、という夢のお話。私の個人的な提案としてお伝えしたいと思います。

新型コロナウイルスの影響で競馬場から離れたお客さんにもう1度、来ていただくために競馬場をより華やかにしていくというのはいかがでしょうか。ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアなど海外の競馬に行ってすごく晴れやかさを感じるのは、その日の競馬場の雰囲気がお祭りなんですね。ただ、いつもそうというわけではありませんよ。大きいレースがある特別な日の開催だけ。ファンの皆さんは特別なオシャレをしておいでになります。その日は普段の競馬の日よりも、皆さんが競馬場にいること自体を楽しんでいるように思うんです。

ディアドラで行ったロイヤルアスコット開催は別格として、グロリアスグッドウッド(英国)も良かったですね。お客さまが着飾って競馬場を訪れます。もちろん、私たち関係者も着飾っていますよ。晴れの日の格好で競馬場に来るということは、日本ではあまりありませんね。だから“着飾って行く場所が競馬場”という特別な日を設けてもいいと私は思うんです。競馬場は広いですから、一部にそういうエリアを作ったりするのも面白いと思いますね。

競馬自体を華やかにするために、特別なお祭りの日を作って。ファンの皆さんも一緒になってね。競馬場へ行く楽しみが増えると、競馬に対する考え方もだんだん広くなってくると思うんです。競馬場は楽しめるところなんですよ、と。ファンの皆さんにも競馬をきらびやかにして盛り上げていただくために、それに映えるものを競馬場でちゃんと用意できたらいいですね。ファッションショーなんかもそのひとつの手だと思いますよ。

ファンの皆さんも普段と異なった晴れの装いでおいでになってください。一番分かりやすいのは、友人の結婚式に出るような格好ですね。大勢の皆さんがそういう姿で来られていると誰も違和感はないですし、楽しいじゃないですか。日本の女性も帽子が似合うと思いますよ。和服もいいですし、ドレスでも、季節によっては浴衣もいいですね。浴衣で行ける競馬場もまた、粋じゃないですか。夏開催の札幌や函館で男女ともに浴衣デーがあってもいいですね。この服を着たいから競馬場に行こう、となるかもしれません。

日本の競馬が、もっと広い楽しみ方ができるような企画があればいいですね。ファンの皆さんも参加していただいて楽しんでいただくということが、競馬場でできればと思います。コロナ禍を乗り切って、これから、また競馬をより楽しいものにしていくために。競馬場に行くことを楽しいものにしていくために。競馬場をきらびやかにして、またそこにファンの皆さんも参加していただく。そういうお祭りで特別な日ができれば、面白いかなと思います。

◆橋田満(はしだ・みつる)1952年(昭27)9月15日、兵庫県生まれ。父は元騎手、調教師の俊三さん。東海大海洋学部卒。83年に調教師免許を取得。85年に栗東で開業。99年ダービー馬アドマイヤベガをはじめ、サイレンススズカやアドマイヤグルーヴ、ディアドラなどの名馬を手がけた。12~14年と16~22年に日本調教師会の会長を務め、現在は名誉会長。JRA通算743勝。重賞63勝、うちG1・11勝(20日現在)。

2月末で引退する調教師
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15年、アスコット競馬場で正装したファン
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22年、ロイヤルアスコット開催時は子供たちもモーニングにシルクハット姿で笑顔を見せる
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22年、ロイヤルアスコット開催時に来場した女性
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16年、凱旋門賞を観戦に訪れた女性
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