英国のチャールズ国王の戴冠式が行われる5月6日は、英国クラシックの幕開けとなるG1英2000ギニーがニューマーケット競馬場で開催される日と重なります。

もちろん式典の主である新国王が競馬場を訪れることはありませんが、競馬サークルでは6月3日の英ダービーデーに君主として初めてエプソム競馬場を訪れるのでは、といううわさが広まっています。

その根拠となっているのが、エリザベス女王の馬遺産の中に含まれていたスリップオブザペン(牡3、父ナイトオブサンダー)、「書き間違い」と名付けられた3歳馬の活躍です。

女王が生産し、凱旋門賞馬のエネイブルで知られるゴスデン調教師親子が管理する栗毛馬は、昨年11月にロンドン郊外のケンプトン競馬場でデビュー。オールウエザーの1600メートル戦を5馬身半差で圧勝し、4月10日に同じ設定で行われた一般戦も好内容で連勝すると一躍、クラシック候補に浮上しました。

英国のブックメーカーがつける前売りオッズは英2000ギニー、英ダービーともに17倍。後者ではディープインパクトの最後の大物として評判のオーギュストロダン(3・5倍)、ゴドルフィンの秘蔵っ子と呼ばれるインペリアルエンペラー(13倍)に次ぐ、3番人気タイという高い評価を受けています。

スリップオブザペンの馬主名義は国王とカミラ女王を示す「HM The King&HM The Queen Consort(王と王の配偶者)」。エリザベス女王のような競馬への情熱は薄いと伝えられることの多いチャールズ国王ですが、母が残してくれたご夫妻の愛馬が英ダービーに駒を進めるとなれば、王室にとっても一大事。スリップオブザペンのこれからの活躍いかんによっては、王室と競馬の関係にも新たな展開が見られそうです。【ターフライター・奥野庸介】(ニッカンスポーツ・コム/極ウマコラム「ワールドホースレーシング」)