騎手3年目でいよいよ重賞に初めて騎乗する。日曜札幌メインは牝馬限定重賞のクイーンS(G3、芝1800メートル、30日)が行われる。

女性ジョッキー古川奈穂騎手(22=矢作)が、自厩舎のグランスラムアスク(牝4)とのコンビで挑む。同馬との絆、師匠の矢作芳人調教師(62)の“親心”など、さまざまな思いを胸に秘め、タイトル獲得に闘志を燃やす。

笑顔ではきはきと取材に応対する古川奈騎手が、デビュー3年目にして初めて重賞の舞台に立つ。コンビを組むのは過去15回騎乗して3勝を挙げたグランスラムアスク。思い入れのある馬、自身の研さん…。これまで培ってきたものを、北の大地で発揮する時が来た。

21年11月東京の2歳未勝利戦を勝ち上がった。左肩手術のため休養していた古川奈騎手にとっては、復帰後の初勝利だった。翌22年10月新潟の粟島特別(1勝クラス)では初めて特別戦を制した。節目のレースではパートナーの背にいた。「手術からの復帰後も、初めて特別を勝った時もグランスラムアスクでした。この馬で重賞に挑戦できるのは心強いです。楽しみにしています」と目を輝かせた。

苦しさも糧にした。スマホの不適切使用による30日間の騎乗停止中には、矢作師からさらなる成長を期待され、地方・南関東の大井競馬場で調教に騎乗。5月中旬から3週間ほど、中央とは異なる環境で午前2時30分から馬にまたがった。「大井では体力的にもいい経験になりました。1日に18頭とか乗ることもありましたので。競馬当日でも疲労感なく乗れます」と“修業”の成果を実感する。「前は緊張して硬くなっていましたが、これまでの積み重ねで意識せずに乗れるようになってきました。平常心でいくように心がけています」と力強い。

グランスラムアスクで特別戦を2回勝っていることなどから、師が弟子にチャンスを与えた重賞挑戦。「注目されるのはありがたいです。結果を残せるように頑張ります。大きな舞台ですが自信を持って乗りたいです」と締めた。信頼するパートナーと成長した姿で結果を残し、師匠に恩返しができるのか注目の一戦だ。

【舟元祐二】

◆JRA現役女性騎手のJRA重賞成績 藤田菜七子騎手が19年カペラSをコパノキッキングで勝ち、史上初めてJRA女性騎手の重賞勝利となった。22年7月には今村聖奈騎手がCBC賞をテイエムスパーダで制覇。新人騎手の重賞初騎乗初勝利は84年のグレード制導入後、史上4人目で女性では初。古川奈と同期の永島まなみは今月2日のCBC賞(アビエルト=12着)で初騎乗。なおG1は藤田が2回挑んでいる。

◆古川奈穂(ふるかわ・なほ)2000年(平12)9月13日、東京都生まれ。JRA初騎乗は21年3月6日阪神1Rラント(10着)。初勝利は同年3月13日阪神6Rのバスラットレオン。今年は24日現在JRA13勝。同通算30勝。154・6センチ、44・8キロ。