姉に負けじと、主役の座を奪った。白毛のアイドルホース、ソダシの全妹で3番人気ママコチャ(牝4、池江)が重賞&G1初制覇。混戦のスプリント界を制圧した。好位から抜け出し、迫るマッドクールを鼻差退けた。勝ち時計は1分8秒0。

管理する池江泰寿調教師(54)は昨年のジャンダルムに続き連覇。鞍上の川田将雅騎手(37)は18年ファインニードル以来5年ぶり2度目の勝利となった。

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堂々たる走りに、誰もが目を奪われていく。ママコチャがキュートな鹿毛を揺らし、険しい坂道を先頭で駆け上がる。芦毛のマッドクールに内から迫られ、ゴール前でぐいっとひと伸び。鼻差だけねじ伏せ、G1初挑戦で真っ赤な優勝レイをもぎ取った。スプリント女王へとエスコートした初コンビの川田騎手は「何とかしのいでくれと思いながらゴールまで連れて行って、無事に勝ち切ってくれてよかったです」とヒロインをたたえた。

私だって、同じステージに立ちたかった。G1・3勝の白毛の全姉ソダシは2歳女王からクラシック路線の主役を張り、王道を歩んだ。ママコチャも姉の影を追ったが、前向きさがあだとなり出世が遅れた。それでも初の短距離挑戦の前走北九州記念で2着と好走。「早めに千二を使っていれば重賞も勝てていたと思う。お姉さんのこともあって適性がつかめなかった」と池江師。歩むべき道はここにあった。

ど根性ぶりは姉に引けを取らない。鞍上は「内からぶつけられたことにより、バランスを崩しながらああいう競馬をせざるを得なかったです」と話す。最初のコーナーで内のナムラクレア、外のメイケイエールに挟まれた。ただ1歩も引かず、絶好の位置を取り切った。6月にソダシの手綱を取った川田騎手は「タイプは全く違う馬で似ているところがほとんどないくらい似ていないですけど、この馬として素晴らしい背中をしています」と将来性を高く評価した。

期待にやっと応えられた。師は「お姉さんのファンが応援してくれていたが、期待をずっと裏切っていた。ようやくG1を勝てて恩返しができた」と胸をなで下ろした。今後は未定も、師は「選択肢が狭まるので」と1400メートルまではレース選択の範囲に入れるとした。華やかな道のりじゃなくても、決して遠回りじゃない。姉とは違ったステージで、10月1日は完璧で究極のアイドルだ。【桑原幹久】

◆ママコチャ▽父 クロフネ▽母 ブチコ(キングカメハメハ)▽牝4▽馬主 金子真人HD(株)▽調教師 池江泰寿(栗東)▽生産者 ノーザンファーム(北海道安平町)▽戦績 13戦6勝▽総収得賞金 2億8444万9000円▽馬名の由来 インカ神話の海の女神。