牡馬3冠最終戦、菊花賞(G1、芝3000メートル、22日=京都)の最終追い切りが18日、東西トレセンで行われた。注目馬の調教を掘り下げる「追い切りの番人」はダービー馬タスティエーラ(牡、堀)を東京の木南友輔記者がチェックする。前哨戦を使わぬ異例の直行ローテ(中146日)。その仕上がり具合はどうか? 枠順は今日19日に決定する。

秋華賞は近年のトレンドであるオークスからの直行だったリバティアイランドが見事に牝馬3冠を達成した。一方、牡馬クラシック最終戦の菊花賞は過酷な3000メートル。前哨戦をたたくのが一般的だ。「ぶっつけ」が連想させるのは調整遅れとか、完調手前といったマイナスイメージだが…。タスティエーラの最終追い切りの背にはJRA短期免許を取得し、新コンビを組むモレイラ騎手の姿があった。

「非常に良かったです。動きもすごくいい。3000メートルの距離だけど、ダービー馬ということで能力は高いと思うし、賢いタイプでコントロールもしやすかった。こちらの指示通りに走ってくれた」。マジックマンは「データ的には休み明けは割引かもしれないが、特に心配はしてません。(休み明けの雰囲気は)感じなかった。馬が出来上がっているという感じでした」と不安視する声を一蹴した。

☆帰厩後の美浦での追い切り過程(すべて馬なり) 

◆9月28日(木)ウッド6ハロン84秒7-11秒9

◆10月2日(月)坂路4ハロン55秒8-12秒8

◆5日(木)ウッド同81秒6-11秒2

◆9日(月)坂路同56秒1-13秒0

◆12日(木)ウッド同80秒5-11秒2

◆15日(日)坂路同56秒3-12秒9

◆18日(水)ウッド同81秒4-11秒7

G1を勝つ馬、ましてやダービー馬なら追い切りで速い時計を出すのはたやすいこと。それにしても、タスティエーラの帰厩後の時計には安心感がある。ウッドと坂路を併用し、ほとんどが併せ馬で併入か先着したものだ。最終追い切りも外ダノンラスター(古馬オープン)、中カフェクロニクル(古馬1勝クラス)の内で併入と絶好の動きだった。

直行を決めた過程を堀師は「(牧場で)乗り始めてしばらくたったところで新たな疲れが出て、前哨戦をたたくにはギリギリいけるかどうかという感じでしたが、その段階で北海道も暑さが厳しかったので菊花賞に向かおう、と」と説明。追い切りを終え「非常にいいコンディションできている」と評価した。

偉大なサトノクラウンの初年度産駒。父は皐月賞を1番人気で6着に敗れ、ダービーは3着。菊花賞には向かわずダービーから古馬相手の天皇賞・秋に直行した。結果は7番人気17着。堀師が「(レース選択が異なることに)意図はないです。お父さんとはいえ、まったく違う個性。ひとくくりにはできない」と言えば、父と香港ヴァーズを制した経験を持つモレイラ騎手も「あえて言うなら、タスティエーラの方が落ち着いているタイプ。その点、距離を延ばすのはありだと思う」とうなずいた。

堀厩舎の直行ローテで忘れられないのは、15年秋。サトノクラウンが17着に敗れた天皇賞から3週後のマイルCSで、G1初制覇の安田記念から直行したモーリスが圧勝劇を演じた。当初ステップに予定していた毎日王冠をパスし、レース史上最も長い間隔(中167日)の勝利だった。タスティエーラはダービーでは勝てないと言われたテン乗り(レーン騎手)で、世代の頂点に立ったジンクスブレーカー。73年タケホープ以来50年ぶりの「ダービー&菊花賞」の2冠制覇を狙える仕上がりだ。【木南友輔】