衝撃的なレコード勝利で史上3頭目となる天皇賞・秋連覇を達成したイクイノックス(牡4、木村)がレースから一夜明けた30日、自身の馬房でさわやかな朝を迎えた。

29日のレース後、美浦トレセンに帰厩したのは午後9時ごろ。この日の朝は激走の疲れからかカイバを少し残していたというが、表情そのものは穏やか。担当の楠助手は「少し疲れてぐったりしているような感じですね。レースが終わった後はちょっと不機嫌だな、『走ってきたな』という感じでした」と様子を語った。

1分55秒2。連覇の喜びには、驚きが重なった。従来のレコードを0秒9更新するタイムがターフビジョンに表示されると、場内にゴールの瞬間に近い歓声がまた沸いた。道中は3番手。同じ先行勢がみな失速していく中、世界最強馬は止まらずゴールへと疾走していた。

楠助手は「厩舎としてやれることはスタートと道中で(脚を)ためられることを目標にやっています。スタートも出られて、道中も折り合えていた。文句なしでした。パドックに入ると割とスイッチの入る馬ですが、宝塚記念の時は気負いすぎてイレ込みが強いなと思っていました。ダービーの時は逆にスイッチが入っていなくて、気が抜けすぎていた。昨日はテンションが上がりすぎず気持ちも入っていて、内面でスイッチが入りながらコントロールできている感じ。パドックの印象が良かったです。いろんな場所での経験が生きていますね。(レコードは)歓声で気付きました。それぐらいすごい歓声でした」と振り返る。発走直前のゲート裏まで付き添い、場内のターフビジョン前に移動して大画面で担当馬の勇姿を見届けた。

11年ぶりの天覧競馬でG1・5連勝を飾った。レース後、馬上のルメール騎手とともに、レースを観戦された天皇皇后両陛下に最敬礼をした。「あんな経験をさせてもらうことはないですから。それを含めてイクイノックスに感謝です。短いスパンで馬にとっては大変ですが、この1年でいろんな環境で培ってきた経験が必ず生きてくると思います。そういう短い期間でも走れるようになった、成長したイクイノックスをお見せしたいです」と楠助手。

次は中3週でのジャパンC(G1、芝2400メートル、11月26日=東京)が待っている。歴代獲得賞金記録更新もかかる一戦。4週間後、世界最強馬の名にふさわしい走りを、再び府中の芝で披露する。