7日は美浦トレセンがざわついていた。6日にあった発表がそうさせていた。それは武士沢友治騎手(46=小手川)が10日付で騎手引退を知らせるもの。武士沢騎手はこの日、いつも通りに稽古に騎乗し、その後取材に快く応じてくれた。騎手の開口一番は「まず競馬ファンの皆さまに、申し訳ないです。いろいろ準備が整ってからと考えていて、公表が遅くなりました」とおわびの言葉だった。SNSには同騎手の引退を嘆く声が多い。先週3日には2番人気カシマエスパーダで勝利するなど、第一線で手綱を取っていた。
JRA競馬学校の教官へ転身する。話が来たのは小手川準厩舎に11月に所属する時とほぼ同時期。当初は調教師の道を考えて勉強をしていた。「調教師の勉強をしていた時に話をいただいてどちらの道を進むのか、この年齢で、いい悩みになりました。そして、教官という人を育てるということもすごく大事な仕事だと思って」と語る。将来ジョッキーとなる候補生を育成する立場には「技術的なことは言ってすぐにできるものではないですよね。ただ、意識とか、困った時にどうやったら対処できるかという考えを教えることはできると思います。ジョッキー出身ということで、実戦に乗っていた感覚、厩舎に入ってからどうするのかなど」とこの先の生徒たちの支えになることを明言した。
97年3月デビューから27年。鞍上は「あっという間でした」と振り返る。「G1を勝ちたかったとも思うけど簡単ではないし、勝ち鞍以上に1頭1頭に思い出がある。お世話になった厩舎にも感謝したいです」。重賞初勝利は06年アルゼンチン共和国杯。トウショウナイトとともに制した。「調教からずっと一緒にやらせてもらった。全てを教わった馬です。成長する時期を待って、それを信じてやってきて勝ってくれた。それが自信になったと思います」と回想した。
ラストライドとなる今週末には計11鞍が集まった。土日とも中山。日曜5Rには重賞3勝をともにしたマルターズアポジーの産駒で、同馬主のオリジナルオリジンに騎乗。同産駒はJRAに現役で2頭のみ。鞍上は「素直にうれしいです」とぽつり。そして「ファンの皆さまのおかげで、ここまでやれました」とお礼の言葉で締めた。同騎手の最後の手綱さばきを中山で。競馬ファンを最後まで楽しませる。