“河内の夢”が広がった。菅原明良騎手(23=高木)騎乗の3番人気ウォーターリヒト(牡4)が差し切り、重賞初制覇を飾った。勝ち時計は1分32秒6。今月22日に70歳の誕生日を迎え、来月4日に定年引退する河内洋師(69)は、18年5月平安S(サンライズソア)以来、約7年ぶり7勝目となるJRA重賞制覇。2着馬ボンドガールに騎乗した武豊騎手も兄弟子の勝利を祝福した。

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前からも後ろからも、祝福の手が伸びてくる。69歳の河内師が握手攻めにあった。歓喜に沸く検量室前。ウォーターリヒトが少し早い定年祝いを持ってきた。河内師も「もう終わりだからね。久しぶりにうれしい。最後に重賞を勝ってくれた」と笑みが絶えない。弟弟子の武豊騎手も師の元へ。言葉を交わし、また笑う。「負けたのに、偉い人やね」。2着に敗れた“弟”の心遣いもうれしかった。

研ぎ澄まされた脚は頼もしさを増していた。結果的に上位の大半を先行馬が占めた展開で4角ではまだ12番手。直線で外に出されると、4戦連続となる上がり3ハロン最速(タイ含む)の末脚を繰り出した。「最後は確実に伸びてくる馬。デビューした時から緩かったけど、中身がしっかりした」と成長を喜んだ。近畿地方の降雪の影響で前日8日は2時間以上も到着が遅れるアクシデントがありながら、馬体重2キロ減での出走。心身の強さで約7年ぶりのJRA重賞を届けた。

今月22日に70歳を迎える。騎手時代にJRA通算2111勝、05年に開業した調教師生活も最後のカウントダウンに入った。ウォーターリヒトが次に走る姿が見られるのは、自らの手を離れた後になる可能性が高い。「まだ先がある。無事にいくのが一番だからね。賞金も加算できたから、好きなところに使えるでしょう。もちろん応援に行く」と愛馬を気に懸けた。湿っぽいお別れではない。自身の引退後にまで夢が広がる豪快な差し切りだった。【松田直樹】

◆ウォーターリヒト ▽父 ドレフォン▽母 ウォーターピオニー(ヴィクトワールピサ)▽牡4▽馬主 山岡正人▽調教師 河内洋(栗東)▽生産者 伏木田牧場(北海道浦河町)▽戦績 13戦4勝▽総獲得賞金 1億3990万円▽馬名の由来 冠名+光、明かり(独)

◆定年による引退調教師の引退年度の重賞制覇 今年は音無秀孝師のプロキオンS(サンデーファンデー)に次いで2例目。昨年は安田隆行師が愛知杯(ミッキーゴージャス)、中野栄治師が日経新春杯(ブローザホーン)を勝った。