【リヤド=太田尚樹】完調でなくても完勝-。ダート世界最強馬フォーエバーヤング(牡5、矢作)が、1着15億円超の世界最高賞金レースで史上初の連覇を果たした。海外勢の包囲網を打ち破り、米国代表ナイソス(牡5、B・バファート)との日米BCウイナー対決を制した。総獲得賞金は45億円を突破。次戦のドバイワールドC(G1、ダート2000メートル、3月28日=メイダン)で昨年3着のリベンジに挑む。
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砂漠の夜闇に照らし出された赤褐色のダートに、ワインレッドの勝負服が躍る。禁酒の国の群衆を酔わせ、呪文のような現地語実況が熱を帯びる。アラビアンナイトの英雄フォーエバーヤングだ。砂を蹴り、巨体が弾む。外からBCダートマイル覇者ナイソスに迫られても、抜かせない。並ばせない。“永遠”にも思える1馬身差。完勝だった。
包囲網も打ち破った。序盤で外から馬群に押し込まれ、前方から砂を浴びせられる。各国の猛者たちが世界最強馬をつぶしにきた。それでも人馬は動じない。4角で内ラチ沿いに空いた進路を見逃さず、鼻先を突っ込んだ。あとはもう、誰にも止められない。愛馬の首筋をたたいた右手で安堵(あんど)を握りしめた坂井騎手は「アメージングホース。彼を誇りに思う」とたたえ「馬を信じて乗った。囲まれない位置でと思っていたけど、みんなが倒しにきて…。嫌な形になった。どんな形でも勝つのがすごさ」と舌を巻いた。
完調ではなかった。今年序盤の目標はサウジCとドバイワールドCの連勝。1、3着で史上初の快挙を逃した昨年を踏まえ、今回は東京大賞典をスキップした。鞍上いわく「本来は使ってからの方が良くなる」。冬の日本で絞り込むのにも苦労した。矢作師は「まだ100%には至ってなかった。行き脚と状態が比例する馬。今日はもうひとつだった」と指摘する。だが、負けない。それが王者だ。
決して生まれながらの主人公ではない。2歳時から寄り添う渋田助手は「トモが駄目で引きずって歩いていたし、ダッシュもつかなかった」とデビュー前を回想する。ゲート試験も不合格。競走馬たる資格を得るのさえやっとだった。「努力家だよ」。晩成の逸材は日々の鍛錬を積み重ね、砂上のヒーローになった。
夢は続く。次章はドバイだ。中東G1連勝、賞金50億円突破、そして芝への挑戦計画。千夜一夜の物語はまだまだ終わらない。
◆フォーエバーヤング▽父 リアルスティール▽母 フォエヴァーダーリング(コングラツ)▽牡5▽馬主 藤田晋▽調教師 矢作芳人(栗東)▽生産者 ノーザンファーム▽戦績 14戦11勝▽総獲得賞金 45億6083万4900円▽主な勝ち鞍 23年全日本2歳優駿(Jpn1)、24年UAEダービー(G2)ジャパンダートクラシック(Jpn1)、東京大賞典(G1)、25年サウジC(G1)日本テレビ盃(Jpn2)BCクラシック(G1)▽馬名の意味 曲名より

