【松井律・競輪黙示録スペシャル】

2日目特選終了後、真杉匠はかつてないほど悔しそうな表情を見せた。

4月後半、オールスターファン投票の中間発表で、1位に躍り出た。だからこそ、初戦からインパクトのあるレースでファンに恩返しがしたかった。

「2年前のけがを機に、走りが自在になってしまった。2年かけてズレてしまった根本は簡単には治らない。焦りもあったけど、これが現状と受け止めるしかなかった」。

踏み直しが利かないから粘れない。短い距離でも後ろに差される。仕掛ける勇気も徐々に削がれていった。

1月G3大宮の準決は、落車に巻き込まれて終わった。後日、OBの平原康多氏が慰めの言葉をかけると、真杉はピシャリと言った。

「僕が悪いんです」。

行くべきところで行っていない。行きたい気持ちはあっても自転車が進まない。不運で片付けず、結果的に行かない判断をした自分を責めた。この言葉を聞いた平原氏は、「真杉はもう大丈夫だ」と感じたという。

なかなかエンジンのかからない前半戦、真杉は「今年も駄目かな」と腐りかけた。惨敗に終わったG1全日本選抜の後、エジプトを一人旅した。

「カイロからサハラ砂漠まで5時間以上かけて行った。日本語の通じないガイドさんには頼れない。こうして旅をすると、人として成長できる。日本がいかに恵まれた環境なのか分かりますよね」。

結果が求められる立場であることは重々承知。もうけがもセッティングも言い訳にはしない。駄目な自分でも投票してくれる人がたくさんいた。究極の負けず嫌いが、この評価に奮い立たないわけがない。準決10Rは、渾身(こんしん)のパフォーマンスを約束する。その先には、五月晴れが待っている。吉田拓矢との(1)=(9)-(2)(6)(7)(3)(5)で10点。