騎手として「無事に」やり抜いた。今日1日から調教師へ転身する藤岡佑介騎手(39)が2月28日、阪神競馬場で引退式を行った。
この日は父健一調教師(65)の管理馬で1勝を加え、JRA通算1110勝目。2年前に弟の康太騎手(享年35)を落馬事故で亡くす悲しみも乗り越え、04年3月のデビューから丸22年のキャリアを締めくくった。
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勝負服の袖で涙をぬぐった。ステッキを置いた藤岡佑騎手が、まぶたを桃色に染めて思いを口にした。
「どんなに嫌なことや、つらいことがあっても、レースで勝って『おめでとう』『ありがとう』と言ってもらえれば、全部忘れて最高にハッピーになれる。ジョッキーという仕事が本当に大好きでした」
引退式当日に、その至福をまた味わえた。しかも、父健一師の管理馬で。
「最低限でしたけど、ひとつ勝ててよかった。馬が命をかけて走ってくれるので、それに応える仕事ができるように日々を過ごしてきたつもり」
騎手としてのモットーは「事故なく、不利なく」だった。2年前に落馬事故で弟を亡くし、その志はひときわ強くなった。
「事故があってからは、とにかく無事に引退することが、藤岡家の長男の務めだと思っていたので、役割を果たせてホッとした」
何度も繰り返した「無事に」という言葉は、彼が口にするからこそ重い。
今日からは調教師としての道を歩む。やりきったから、悔いはない。
「また生まれ変わっても、一緒にジョッキーになりたいと思います」
誰と一緒に? それは聞くまでもない。騎手として夢と馬を追った藤岡兄弟は、これからも二人三脚で走り続ける。【太田尚樹】
◆藤岡佑介(ふじおか・ゆうすけ)1986年(昭61)3月17日、滋賀県生まれ。04年に作田誠二厩舎でデビュー。05年京都牝馬Sアズマサンダースで重賞初制覇。JRA・G1は18年NHKマイルC(ケイアイノーテック)、24年フェブラリーS(ペプチドナイル)の2勝。JRA通算1万2345戦1110勝(うち重賞49勝)。フェアプレー賞は6度受賞。昨年12月に調教師試験合格。165センチ、52キロ。

