佐藤輝よ、パ・リーグは初球から来るぞ! 思わぬ事態で交流戦まで実戦がなくなった首位・阪神。悲願の16年ぶり優勝のためにも交流戦は重要だ。広島監督として3連覇を果たし、18年にはソフトバンクと並んでトップ(記録は2位)にも立った緒方孝市氏(日刊スポーツ評論家)による「緊急提言」を2回にわたってお届けする。【取材・構成=編集委員・高原寿夫】

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広島-阪神3連戦が中止になったのは驚いた。広島のコロナ禍はOBとして心が痛いとしか言いようがないけれど、ペナントレースを考える上で阪神側からすれば今回の事態はプラスととらえるべきだ。

ここまで40試合以上経過し、選手には疲労が蓄積されている。それでなくてもコンディションの維持が難しい梅雨どき。おまけに昨季同様、今季も選手らはコロナ禍による厳しい行動制限を受けている。リフレッシュも難しく、精神的にも疲れているはず。ここで間が空くのは悪くない。

その間、当然、他球団は試合をしているが、そこに意味がある。交流戦で困るのは情報が少ないことだ。もちろんスコアラーは対戦相手の情報を集めているが、それを選手がもらうのは試合前。現場から言わせてもらえればほとんど「ぶっつけ本番」なのだ。

しかしこの中止で阪神側からすればロッテ、あるいは西武の実戦を、データを手元に置きながらテレビで見るということができる。例えば正捕手の梅野にとっては大きいことだろう。

そして注目の佐藤輝だ。チームが快進撃を続けている1つのポイントはやはり彼の存在だろう。ここに来て快音が出ていないようだが、そこにはセ・リーグ各球団の“まき直し”がある。

開幕当初、佐藤輝に対しては徹底的に内角の速い球で攻めてきていた。だがすべての投手がそこを攻めきれるわけではない。佐藤輝自身の能力も高いので次第に対応できる場面が増えてきた。おまけに彼の周辺にはマルテだったりサンズだったり故障前の大山だったり気を使う打者が多い。佐藤輝1人をマークする状況ではなくなってきた。そういう諸条件もあって、ルーキーながら好結果が出ていた面はあると思う。

しかし予想以上に結果を出したことで佐藤輝への攻めが原点に戻ってきている感じだ。そこに加え、大山の故障で「4番打者」になる条件も生まれた。マークがさらにきつくなったわけだ。

もちろん交流戦でもパ・リーグのバッテリーは内角を攻めてくるはず。そこに加えて、パ・リーグには特徴的な配球がある。「決め球から入ってくる」ことが多いという点だ。1球目からフォークボールを投げてきたりする。ソフトバンク甲斐などは特にそうだ。

言うまでもなく初球からガンガン振ってくるパ・リーグ打者への対策だが、これはセ・リーグとは違って感じるはず。それに面食らって頭が真っ白になるとその打席はダメになってしまう。そのためにもそういう攻めがあるということを理解した上で、内角球に向かっていくのか変化球を反対方向に打つのか。しっかりと予測し、対応することが重要になってくる。