屈辱を秋に生かせ! 「日本生命セ・パ交流戦」のソフトバンク3連戦に負け越した阪神に、広島3連覇監督の緒方孝市氏(52=日刊スポーツ評論家)がカツを入れた。このカード負け越しを受けて若い選手たちが反省、経験を生かして“秋の再戦”に挑むことを期待した。【取材・構成=編集委員・高原寿夫】


故障者などでメンバーがそろっていないとはいえ、そこは日本シリーズ4連覇中と強いソフトバンク。そこに今季セ・リーグで強さを発揮する阪神がどんな戦いを見せてくれるか。そこを注目していたが残念な結果になった。

8、9回に2本塁打が出たものの一方的な展開になった試合は守りからリズムが作れなかった。まず先発の西純だ。ガンケルの登板回避で急きょ登板したがファームで投げる予定だったので調整はできていたはず。逆に言えば「これはチャンスだ!」と思って攻め込んでいくぐらいの気持ちで投げてほしかった。

フォーク主体の投球はよかったがポイントは先制を許し、なお2死一、二塁のところから。中村はカウントが悪くなって歩かせてしまった。満塁になって甲斐。ここも変化球が2つ外れて打者有利のカウントに。打たれた4球目は、梅野が外角に構えていたのにまっすぐがシュート回転して甘く入ってしまったものだ。

若い西純の課題はこういうところだろう。そこまでが良くてもここ一番で甘くなる。例えば秋山ならこういう球は投げない。飛び抜けた速球がなくても彼が結果を出せるのはそういう失敗をしないからだ。身近にいいお手本がいるのだから勉強してほしいと思う。

2番手の斉藤も軽快に2死を取ったのに失策で走者を出した途端、テンポが悪くなる。そんなに気にしなくても…と思ったところで今宮に打たれた。そこは課題だろう。この走者は大山の送球エラーで出たもの。マルテがタイミングよくジャンプしていれば捕球できたとは思うが、いずれにしても守りのミスから失点したのは、やはり痛い。

対照的だったのはソフトバンク和田だ。常に投手有利のカウントをつくり、結構、甘い球もあったのに阪神打線に付けいる隙を与えなかった。いかにも経験豊富な大投手という印象でソフトバンクの底力を象徴していたとも言える。

いつも言うけれど「経験=失敗」だ。連敗で阪神は苦しいムードになったが、ここを乗り越えなければリーグ優勝、さらに先には行けない。終盤にマルテ、佐藤輝が本塁打し、今季の持ち味である長打攻勢が出た。これで切り替え、残りの交流戦2カードに勝ち越し、リーグ戦に戻っていかなればならない。

もしも日本シリーズでソフトバンクとの“再戦”ということになったならば今回の負け越しから得た教訓を生かして戦ってほしいものだ。(日刊スポーツ評論家)

阪神対ソフトバンク 4回表ソフトバンク2死、三森の打球をさばくも一塁へ悪送球する大山(撮影・上田博志)
阪神対ソフトバンク 4回表ソフトバンク2死、三森の打球をさばくも一塁へ悪送球する大山(撮影・上田博志)