阪神のクライマックスシリーズ(CS)を占う日刊スポーツ評論家陣による提言企画の「かく戦え」。今回は98年横浜(現DeNA)の日本一監督の権藤博氏(82)です。CS突破に本塁打の魅力がある佐藤輝明内野手(22)のスタメン起用は当然と話すなど、必勝指南は熱を帯びました。【取材・構成=松井清員】

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ペナントレースは阪神も強かったし、ヤクルトとどっちが勝ってもおかしくない戦いでした。ただ阪神は佐藤輝を外したり、梅野が終盤出てこなかったりと、これで戦うんだという一貫性がなく、その差が明暗を分けたように感じました。代わりの戦力がいるからコロコロ変えられるのもすごいけど結局、戦力を持ちながら7ゲーム離しても競り負けた。最終的な勝率はたった5厘差でゲーム差は0ですからね。高津監督の腹を決めた戦いが、阪神の上を行ったということです。

私はあれほどのレギュラーは使い続けないといけないと思いますよ。本人のためにもファンのためにも。CSも当然で、特に佐藤輝なんて誰に聞いてもスタメンで起用した方がいいに決まっています。いくら三振しようと、ヒットが59打席なかったと言っても、いつか当たるぞという迫力、投手に与えるプレッシャーは相当なもの。投手は佐藤輝が打席に立つだけで、相当な神経をすり減らしますよ。

CSは目いっぱいの緊張感で戦った公式戦最終戦から10日も空く。投手は間隔が空いても調整が心配ないけど、打線はこれだけブランクがあるとそれこそ水ものですよ。練習試合はしょせん練習試合で、社会人相手だから緊張感も違う。結局CSは点を取らないと勝てないわけで、4の1でも5の1でも、ホームランになる可能性があるなら使わない手はない。相手もいい投手をどんどんつぎ込んできて1点が重いんですから。

両リーグとも最後の最後までもつれにもつれて、涙を流すほど優勝を喜び合った。これで日本シリーズに出られなかったら、143試合は何だったんだ、1年間は何だったんだとなる。ヤクルトもオリックスも惨めですよ。でも、それが今のCSのシステムで、短期決戦は本当に何が起こるか分かりません。どっちが強い、弱いはペナントレースで証明されました。CSは強い者が勝つのではなく、勢いがある者が勝つのです。

幸い阪神はファンの後押しがある甲子園でスタートできます。阪神が貯金21で巨人が借金1。相手は終盤大失速してギリギリでCS圏内に上がってきているし、戦力的にも阪神が上、優位でしょう。日本シリーズを目指すなら、巨人にしっかり勝って、勢いをつけて神宮に乗り込みたい。そして試合間隔が空いているヤクルトにその勢いをぶつけて、一気に押し込みたい。

ただファーストステージに関しては、私は1戦目より2戦目が重要だと思っています。初戦が大事と言うけど、1戦目に負けてもどうってことはない。2試合先取制は第2戦が大事です。私が監督なら先発は阪神が高橋、巨人は菅野が2戦目の方が面白いと思うぐらいです。1戦目に勝った方は当然、第2戦で終わらせたい。逆に第1戦で負けた方は第2戦で止めるか、止めないかの必死の戦いになる。第2戦で勝つと勢いづいて、第3戦も勝つ確率が上がると思っています。それぐらい“超短期決戦”は特別ということです。大事なのは打線のつながりと投手のつなぎ方。キーマン? 出ている選手全員です。