楽天のルーキー捕手、安田悠馬捕手(21)が2月下旬に田中将、則本、早川と先発陣の軸を相手にマスクをかぶっている。首脳陣も見極めている段階だが、開幕1軍、さらには開幕スタメンを狙える可能性は十分にある。

捕手には良い意味での繊細さが必要だ。豪快な打撃やキャラが目立つが、意外に繊細さを持ち合わせていると感じた。2回1死一、二塁の守備。直前の打者だった中田の右足が作った打席内の穴をならしていた。凸凹のままだとワンバウンドした時に跳ね方が変わってしまう。それでも、そのまま放置しておく捕手もいる。

安田は次打者の大城が入る前に土をならし、則本の投球に変な間を与えることもなかった。無意識だろうが、大事な作業でもある。サイン交換も現状ではスムーズでテンポとして投手寄りにも打者寄りにも偏っていない。自分のリズムを刻んでいる。シーズンになればピンチの時にはサインを出すにも慎重になったり、逆にリズムを変える工夫も必要になるが、基本として違和感なくできている。

22日のヤクルト戦では2回1死一、二塁の打席で三塁コーチをジッと見ていた。序盤で打撃力のある安田にサインを出す場面ではなく、三塁コーチも素振りも見せなかった。「打て、しかないだろう」と初々しく感じたが、繊細さの表れなのかもしれない。

リードはこれから覚えていくことになる。エース級と組んで数を重ねれば、投手の特徴を把握した上で自分の色をどう出していくかを考えてやっていかないといけない。今は田中将や則本にはお伺いを立てている感じだろうが「こっちで行きましょう」と自分の意見を言える準備をする必要も出てくる。

その中で積極的な姿勢も見られた。2回一、三塁では広岡に2ストライクから3球勝負で低めのゾーンぎりぎりのフォークを適時二塁打とされた。これは次につながる打たれ方と言える。飛んだコースが良かったという安打で、それならボールになるフォークでいいと強く要求する、1球内角を見せる、則本昂の外角スライダーで空振りを奪いに行く、と反省の選択肢が広がる。この時期に一番ダメなのは外角に外してボール球で様子を見る無難さだ。1球外して次に打たれても、改善点が限られてしまう。安田には今の姿勢を続けて欲しい。

今年はロッテ松川や西武古賀とルーキー捕手が目立つ。私も高卒1年目で開幕1軍に入った。当時は「そのうち経験を積めばレギュラーになれる」と根拠のない自信を持ち、成長を妨げたと感じている。自信ももちろん必要だが、どこかで謙虚さを持つことが大事だ。3人の新人捕手が楽しみだ。(日刊スポーツ評論家)

巨人対楽天 4回裏を抑え、ベンチに戻る早川(右)と安田(撮影・河田真司)
巨人対楽天 4回裏を抑え、ベンチに戻る早川(右)と安田(撮影・河田真司)
巨人対楽天 6回表楽天無死二塁、適時二塁打を放つ安田。投手戸郷(撮影・江口和貴)
巨人対楽天 6回表楽天無死二塁、適時二塁打を放つ安田。投手戸郷(撮影・江口和貴)