手に汗握る3位をかけた一戦は、素晴らしい投手戦になった。西武先発の今井が若さあふれるピッチングを披露すれば、楽天岸はベテランらしい丁寧なピッチングで対抗した。

今季からテークバックをコンパクトにした今井は、安定感が出てきた。これまでは走者を出すと制球を乱す傾向があったが「危ないかな」と感じたのは序盤の3回だけだった。1死二、三塁のピンチで、1番の山崎にカウント1-2と追い込んでから痛恨の死球。決めにいった真っすぐが引っ掛かってぶつけてしまったものだった。しかし、続く小深田はキレのいいスライダーを2球続けてセカンドフライ。しっかりと腕が振れていた。

3番浅村に対しては、威力のある真っすぐでグイグイと攻めた。1点リードの8回2死一塁では、真っすぐを6球続けて見逃し三振。元チームメートだった浅村をよく知っているキャッチャー森の好リードも光ったが、100球を超えた状況での力勝負。今井の持ち味を発揮した。

その一方で、岸は悔やまれる1球に泣いた。0-0で迎えた5回1死、9番の平沼に決勝ソロを打たれた。カウント1-1で、カウントを悪くしたくないという気持ちがあったのだろう。同じ投手として気持ちは痛いほど分かるが、ボールゾーンに落としたいチェンジアップが、ど真ん中に入ってしまった。

楽天は残り3試合で1敗すると、3位の可能性はなくなる。優勝争いを繰り広げているソフトバンク戦が2試合、オリックス戦が1試合で、簡単に勝てる相手ではない。それだけにこの試合の岸のピッチングを勝利に結び付けられなかったのは痛かった。

一方の西武は残り2試合で1勝すれば3位が確定。前日27日の試合で好投した高橋の出来もよさそうで、今試合の今井も成長した姿を見せた。中継ぎ陣の登板過多もなく、短期決戦に向けて上位チームを脅かす存在になりそうだ。(日刊スポーツ評論家)

楽天対西武 5回表西武1死、平沼(手前)に先制のソロ本塁打を浴びる岸(撮影・滝沢徹郎)
楽天対西武 5回表西武1死、平沼(手前)に先制のソロ本塁打を浴びる岸(撮影・滝沢徹郎)
楽天対西武 楽天先発岸(奥)を見つめる西武先発の今井(撮影・滝沢徹郎)
楽天対西武 楽天先発岸(奥)を見つめる西武先発の今井(撮影・滝沢徹郎)