矢野阪神の快進撃を支える助っ人リリーバーがいる。ピアース・ジョンソン投手(28)。海の向こう、ジャイアンツからやってきた右腕は終盤の勝負どころを任され、5月16日現在で20試合に登板。防御率は脅威の0・89と安定感抜群だ。シーズン初登板から16試合連続無失点も記録し、98年リベラの持つ13試合連続無失点記録も更新。2勝、リーグ2位の11ホールドと、勝利の方程式に欠かせない存在となっている。

チームメートやファンから「PJ」の愛称で親しまれている。マウンドでは150キロを超す直球に、パワーカーブと呼ばれる力強い変化球で打者をなで切る背番号52。だが、マウンドを降りれば、仲間思いの「紳士」となる。

リベラの記録を塗り替えた5月3日DeNA戦(甲子園)。同点の10回、2死二塁のピンチで登場し、2球で切り抜けた。試合後、記録について報道陣から囲まれたPJは「(神宮で)能見さんのランナーを返してしまっていたので…」と仲間の名前を口にした。

さかのぼること、4月17日ヤクルト戦(神宮)。8回1死一、二塁で2番手能見からバトンを受けたが、死球から2点適時打を打たれた。自身に失点こそ付かなかったが、能見に失点を付けてしまっていた。記録を更新したこの日も、3番手能見の走者を背負っていた。自分の記録よりも、仲間への思いで投げていた。この試合は登板後すぐの10回裏。糸原が四球で出塁し、大山の二塁打で劇的なサヨナラ勝ち。PJは続けて「これからタイガースを背負っていく2人(糸原、大山)の活躍。勢いの付く最高の勝ち方だった」。またもや仲間の名前を出し、チームの1勝を喜んだ。

初失点を喫した5月8日ヤクルト戦(神宮)もそうだった。5点リードの8回。4番手福永が4連打を浴び、1死も取れずに降板。無死二、三塁から引き継いだPJも2点適時二塁打を許し、村上に犠飛を打たれて17試合目にして初めて失点が付いた。翌日、無失点記録ストップについて聞かれても「福永くんのランナーも返してしまって、自分自身にも腹が立った」。やはり、出てきたのは仲間の名前だった。

「For The Team」。勝利のバトンをつなぐ新助っ投は常に、チームのため、ファンのため、そして仲間のために腕を振り続けている。【阪神担当 奥田隼人】

勝利投手となった阪神ジョンソン(2019年5月3日撮影)
勝利投手となった阪神ジョンソン(2019年5月3日撮影)