阪神の秋季キャンプで臨時コーチを務める山本昌氏(54)には、一般人にはない特技がある。投手のフォームを見て、そのピッチャーの持ち球を当てるというものだ。正確に言えば、そのピッチャーに適した球種が瞬時に分かるという特殊能力である。腕の位置、腰の高さ、回転…。ブルペンをひと目見れば、どんな変化球を投げるかすぐにイメージが湧く。

中日の担当記者として、すでにレジェンドと呼ばれていた山本氏を何度も取材した。「ピッチャーのことなら普通の人よりも少しだけ詳しい」がお決まりのフレーズ。野球に関する引き出しは誰よりも多く、その視点はいつも斬新。誰も思いつかない意見に、何度も膝を打った。阪神の若手投手陣に繰り出す「目からうろこ」のアドバイスも納得だ。

現役引退が決まり、パドレスから臨時コーチを打診された。すでにスケジュールが埋まっていたため実現しなかったが、海の向こうからもラブコールが届くほどだった。矢野監督とのつながり、そしてタイミング…。複数の要素が重なって実現した「マサ臨時コーチ」だが、秋季キャンプを終えても多くの効果を生むと思う。【阪神担当=桝井聡】