打撃だけが、魅力じゃない。

広島鈴木誠也外野手(27)は、チームトップタイ9盗塁の脚力、すでにGGを4度受賞する守備力、そして強肩もまた、魅力のひとつだ。

今季ここまで2位青木(ヤクルト)に3差をつけてセ・リーグ外野手トップの12補殺を記録する。2桁補殺は12球団でただ1人。昨季も補殺数はリーグトップで、2桁補殺は17年以来となる。相手が鈴木誠の強肩を警戒して進塁を自重することもある中で、これだけの数字を積み重ねてきた。

背景には、昨オフに鳥取・「ワールドウィング」で取り組んだ初動負荷トレ効果がある。春季キャンプ中には「投げる方が一番、違うかなと思います。ここ最近は(肩回りが)固まりすぎて、投げられない。昨年だったら1球、強い球を投げると5秒くらい呼吸ができなくなっていた」と明かした。肩周りの可動域が広がり、送球の強さ、制球に磨きがかかった。

もちろん打撃でも、新型コロナウイルス感染やワクチン接種の副反応などがあった前半戦から状態を上げつつある。球団記録の6試合連続本塁打を記録し、すでにキャリアハイ30号に王手をかけた。打率はリーグ3位。2年ぶりタイトルも狙える。

打撃だけではなく、走ることにも、守ることにも、そして投げることにも、より高いレベルを目指している。その五角形を年輪のように年々広げ、今や球界を代表する5ツールプレーヤーとなった。チームとして目標を見いだしづらいシーズン最終盤も、注目すべきプレーはいくらでもある。【広島担当=前原淳】