野球の国から

苦境越え前に進むロッテのドラ1たち

<浦和の群像4>

浦和球場とクラブハウス前の道路はいつも、ルーキー藤原待ちのファンが列をなしている。おなじみの光景を横目に、ロッテ佐々木千隼投手(25)は「大変そうですよね。すごいっすよね」とつぶやいた。

2年前のドラ1は、注目される苦労を知っている。「1年目って全然分かんないじゃないですか。プロの流れも。次の場所に移らなきゃいけないのに止められて、大丈夫かな、早く行かないと怒られないかなって」。連日テレビカメラ、記者、ファンに囲まれる。そして無情にも、離れていく。「活躍できなかったらやっぱ、取材とかされなくなりますし」。7月に右肘関節を手術した昨年は、1軍登板ゼロに終わった。

9日の日本ハム戦で2年ぶりの勝利をあげウイニングボールを手に笑顔を見せるロッテ佐々木
9日の日本ハム戦で2年ぶりの勝利をあげウイニングボールを手に笑顔を見せるロッテ佐々木

手術後の静かな環境が、野球に100%専念させてくれた。まず痛みがない。「気持ちが全然違う。普通に投げられる。それが一番でした」。思いきり振れた大学時代の映像と今のフォームを見比べたりもした。

よく「前の方が良かった」と言う人がいるが、アスリートは常に試行錯誤しながら前に進んでいる。「戻る」は簡単ではない。5月には5、6回と投球回ものびてきた。当たり前の幸せを実感した。年始に「手術して良かったと思えるシーズンにしたい」と言ったのを覚えている。9日の2年ぶり1軍勝利で、再びカメラに抜かれた表情を見れば「良かったね」以外の言葉は浮かばなかった。

時にドラ1はライバルと比べられる。佐々木の入団時は、ソフトバンク田中がそうだった。安田尚憲内野手(20)の場合は日本ハム清宮、ヤクルト村上がそれにあたる。嫌気が差すこともあるだろう。だが安田は「同世代に同じタイプの左打者が2人、3人いるっていうのは、僕としてもありがたいですよね」。感謝できる器の持ち主だ。

物おじせず肝が据わった村上と、丁寧で物腰柔らかい安田。正反対にも見える2人は昨冬、台湾のウインターリーグで野球談議に花を咲かせた。互いの練習法を話し合い、間近で打って吸収できるものを探した。「いろいろ考えてるなって。刺激になるし負けたくないと思いました」。闘争心を浦和に持ち帰った。

4月13日、イースタンリーグ日本ハム戦で右前打を放つロッテ安田
4月13日、イースタンリーグ日本ハム戦で右前打を放つロッテ安田

安田もまた、2年目の環境を改善している。昨季のドラ1特需に「常に大人に囲まれるのも1つの経験。ありがたかった」と、これまた感謝。一方で「振り返るとバタバタしてきつい時もありました。今年は自分と向き合って練習する時間が取れてます」。寮からの“通勤”も徒歩から自転車に変え、快適らしい。

毎年6月末までは雑草花粉に悩まされる。ドーピングに引っかかるため、強い薬は飲めないことが多い。昨年は目が開けられないほど症状がひどく、今年も顔が腫れていた。が、「やっと終わりました!」。花粉からも解放され、邪魔するものは何もない。

2軍で中軸を打ち、三塁を守る。「まだサードでレギュラーをとれる実力はない。もっと信頼されるようにやっていきたいです」。若さを燃やす面々が、朝球場にやってくるのは8時ころ。「早い日は7時前には来ちゃうかな」。その1時間前に、細谷圭内野手(31)は着いている。(つづく)【鎌田良美】

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