野球の国から

理にかなった狙い、育てて勝つ原采配/里崎チェック

<里崎チェック12:巨人編>

最後は巨人です。圧倒的な成績です。その背景をしっかり考えたいと思います。選手層は厚いとは言えません。投手で開幕からローテーションを守っているのはエース菅野と戸郷。野手で代わりが利かないのは坂本、丸、岡本の3人です。

不動のメンバーで戦ってるわけではありません。原監督と選手の信頼関係をもとに、いわば育てながら勝つという選手起用を実践した上での独走と言えます。

巨人原監督(2020年6月18日撮影)
巨人原監督(2020年6月18日撮影)


まず、最初に触れるべきは菅野の大車輪の活躍です。菅野で連勝を止めない、そして連敗は菅野で止める。この絶対的な存在は白星以上の安心感をチームにもたらします。

そしてここ一番で、高いレベルを発揮したのが守備力、機動力、救援陣です。チーム打率2割5分6厘はリーグ3位。それでもこれだけ成績が安定しているのは、捕逸0、失策19に代表される守備の堅さです。得点できる時に取り、ピンチは守り抜く。チーム防御率はリーグトップの3・29。それゆえの得点352、失点255、得失点差97という盤石ぶりです。

それを支えてきたのは、いわば日替わりメンバーとも言うべき、若手や中堅選手たちです。坂本、丸、岡本を除くポジションは、常に調子のいい者がチャンスを与えられる好循環の中にあります。競争意識が働き、いい緊張感が行き渡っています。

原監督は守備力、機動力、質の高い救援陣という武器を持ちながら、駒をそろえ、駒の使い方を間違えずに勝ちにつなげています。チャンスを与える選手は活躍が期待できるタイミングで使い、自信と経験につなげています。育てながら勝つという極めて難しい任務をやってのけています。

そこには、原監督と選手に真の信頼関係があることが大きいです。原監督の戦略だけでもダメ、選手の意欲だけでもダメ。どちらかが欠けても成立しない方程式ができあがっているのです。

信頼が厚いから原監督は思ったようにやる。思い切った策を迷わず打つ。対阪神ボーアで打席途中で投手交代したり、中継ぎ投手を打者1人でどんどん代える。役割分担が明確で、その意図が投手に伝わっているため、自分の任務に全力を注げるからでしょう。

チームがグラウンドで結果を出す傍らで、編成は来るべき日に備えてます。トレードでウィーラー、高梨を獲得し、チーム力をアップさせました。すぐに試合で使いチームの一員にする。現場とフロントが同じベクトルに向いているのが見えています。

さて、懸案がないかと言えばそうとも言えません。菅野の存在が大き過ぎるがゆえに、仮に菅野にアクシデントが起きた時、チームが受ける影響は甚大です。そうしたリスクに備えるためにも、シーズンを通してローテーションを守れる投手が必要です。それこそ10勝10敗でもいいと思います。候補は何人もいるので、競争原理の中で育てていくことになると思います。

原監督の打つ手、選手起用、チーム編成はほとんどが成果に結び付いています。ただ、ここは明確にしたいと思います。原監督だからうまくいく、評価されるということではなく、やっていることの狙い、プロセスが理にかなっているから結果が伴っているんだと。

巨人だから、原監督だから。そういう視点では、この先も5球団は活路を見いだすのに苦労するかもしれません。強い巨人でさえ、シーズン中のトレードでどんどん選手を入れ替えました。ましてや後塵(こうじん)を拝する他球団が消極的ではどんどん離されます。今年の原監督から、ぜひ学び取ってもらいたいです。

そうでなければ、こうして秋を迎えた途端、あちこちで消化ゲームが始まる寂しいペナントレースになってしまいますから。(この項おわり)※データは9月18日現在

里崎智也氏
里崎智也氏

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